硝子の涙 7 【OS 】

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〜翔side〜

淀む空気の中


「ここからは、私の想像ですが…

陽子様…奥様は…
子供を授かった瞬間全てを悟われた。

産まれてくる子供が双子だと知った途端

旦那様に出産を反対されることを
予測されていたのかと思われます。」


「…何が言いてぇんだよ」


棘を含む智くんの声が

病室を再び緊迫感に包み込んでいく



「旦那様は、産まれてこられる
御子息は櫻井家の跡取りとして
必ず育てるおつもりでいらっしゃいました。

本来持ち合わせるべきの父親としての愛情は…
当時、お仕えさせて頂いた私にも
さほど、感じられなかった様に思います。

奥様との御結婚目的は、あくまでも
ビジネスのパートナーとして。

産まれてくる御子息が、双子では…

奥様に掛かる負担が通常の2倍にも及ぶ。

恐らく仕事に手を回す余裕がないと
容易に思案されたからでしょう。」


「じゃあ…翔くんの母ちゃんは…」


「…旦那様の意向に背いてまでお二人を
産んでしまわれた奥様は旦那様の逆鱗に触れ…

夫婦の縁を切られ、和也様と御一緒に屋敷を
追放されたのです。同時に…

奥様は、何よりも大切な愛息のお1人…
翔様を屋敷に置いていく羽目になって
しまわれたのです。」


「可笑しいだろ…っ！何で翔くんだけっ」


「跡取りを遺すため…でしょう。

和也様は、今でこそ、ご立派になられましたが…
当時は大変病弱でいらっしゃいました故…
旦那様は、翔様を引き取る為にも
ご自分の力を駆使されて親権を取られた。

陽子様は涙ながらも旧姓を使い、新たなご家庭で
再婚されましたが……その後に…、っ」


そう、気を遣う様に言葉尻を濁した影山が
一瞬、狼狽えた様に詰まらせた。



「ちょっ、智…！？」


美鈴の焦った声を無視して影山の胸倉を
思いっきり掴みあげたのは


「いい加減にしろよ、お前」



…目に抑えきれない怒りを宿した彼で




「ふざけんな…ふざけんなよっ！！

こいつらの気持ち考えたこと、あんのか？

翔くんが…こいつがどんな想いで
あの家に留まっていたのか、傍に居た
お前が1番知ってる筈だろうがっ！！！

何でそんなに冷静で居られんだよ！！」


「智くん、やめて…！ 影山は悪くないんだよ…」


「っ、お前まで何庇ってんだよ、！

腹立たねぇの？お前ら兄弟がどれだけ
辛い思いしてたのかこいつは知ってた癖に…！」


「智くんっ！！！」


「っ…」

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