野良猫8《名探偵コナン》

理解者10 ページ43

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まったく褒めたつもりは無いんだが。
もしAが傷も負わせれずに上矢を逃がしたら俺の負担が相当な物になるだろう。
相手はあのGATEの生き残りであり、幹部。
ただのバカではない。
きっと戦闘も出来て頭もキレるやつだ。

そんな奴の相手に最前線から引いた俺が殺さずに捕まえることが出来るだろうか？
そう、殺さずに。

Aが一番望んでいることは、上矢を生かしたまま捕らえること。
殺ししか脳がない俺に、そんなことが出来るのだろうか...


『アイリッシュ』

｢...あ？｣

『信じてるよ』


その言葉で俺の不安は吹き飛んだ。
強いその言霊のような言葉に少し恐怖すら感じる。ここまでAを信用していたなんて。

黙って頷き、Aの次の言葉に耳を傾ける。
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『もしタイマーが動いてて私が動けない状況でも、上矢の確保を優先してほしい。
私の所には連絡しない限り来ないでね』


...あくまでAは上矢の捕縛が第一優先らしい。

どんな状況か分からないし、連絡が取れない状態かもしれない。
いつ爆弾が爆発するかも分からない。
それが分かるのは建物内のAだけ。


アイリ「自分の命よりも上矢の確保ってわけかぁ？よくもそんな命令ができるな」

『これは私からの“お願い”だよ。』

アイリ「実質的に命令だろ」


呆れている俺にAはﾊﾊｯと笑った。
自分の命が危ういと分かっているはずなのに、この勝負はAにとってこの数10年の全てを掛けている大事なモノのはずなのに、Aはいつもと同じように笑った。

彼女の性格は今でも掴めない。
だが不器用なのは確かだ。でも決めた事は突き通す、そして強い信念がある。
そしてこの間味わったような、人を押し潰すような圧も。
正義の部分もあり、闇の部分もある。そして、それを自分でよく理解している、不安定でよく分からない。


それ以外にも予測不能な行動を起こす時がしばしばある。
俺が白川正明となってから、GATEを探る仕事が増えた。
Aに頼まれれば俺はその“お願い”をこなす。
出来るわけない仕事だってくる。
それについて不平を言った時は｢お願いなんだから別に断ってもいいんだよ｣と、無茶苦茶な意見を言ってくる。


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だが、こうして過ごす内に彼女はかなり優しい事は分かった。
俺に新しい名を与え、“お願い”以外の時間は自由をくれる。その間俺が何をやっているのか知らないのか、知っているのか何も言わないのか分からないが、口出しはしない。



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