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煙玉の効力なのか、志士達は追ってはこず、私達は漸く足を止めて肩で息をしていた。喉の奥から血の味がして、非常に気持ち悪いが、生きているならどうということはない。


「はぁっ……何とか……撒けたみたい、ですね……」

「そうですね……。あー、死ぬかと思った……。すみません、俺全然役に立てなくて……」

「まさかっ。あそこで東堂さんが突き飛ばしてくれなかったら、私は今頃あの世でした……。ありがとう、ございました」


へらりと情けなさそうに笑う東堂さんに慌てて首を横に振る。本当に、あそこで私は生きるか死ぬかの瀬戸際にあったのだ。役に立たなかったなどとんでもない。大体最初に東堂さんが気付いたからこそ、今無事でいるんだし。

どうやら東堂さんは、先月入ったばかりとは思えないくらい、察しがいい優秀な人のようだ。またいい人材が入って良かった。そして私の所為で傷つかなくて良かった。

心の底から安堵して、「はーっ」と息を吐くと、先に息を整えた東堂さんが携帯を取り出した。


「とにかく、屯所に連絡しましょう」

「そですね……」


あーまた隊長に心配させてしまうし怒られる……。


携帯を取り出して電話をかける東堂さんを見ながら、はあ、と深い溜息を吐く。

――その瞬間、ぱんっと乾いた音が、人気の無い道に鳴り響いた。


「………え?」


ぐらりと視界が回って、激しい衝撃が全身を襲う。地面に倒れたのだと気付いてからも、混乱は収まらない。


何故、東堂さんの手には武骨に黒光りする銃が握られているのか。

何故、私の下腹部には激しい痛みがあるのか。

何故、私の熱いものが地面に広がっていくのか。

――理解、出来ない。


「とう……どう、さん……?」


まるで現実味がなくて、呼吸が苦しくて、息も絶え絶えに呼び掛ける。ほぼ俯せに倒れている所為で、東堂さんの顔はよく見えなかった。


「すみません、Aさん」


先程までの柔らかな声からは想像もつかない冷たくて平淡な声に、この人は本当にさっきまでと同じ人なのかと愕然とする。まるで、人格が変わったかのようだ。


「あなたは何にも悪くない。でもね、仕方ないんですよ。だってあなたがいたら、真選組は潰れない。重症を負わせたって全快してしまう。だからね――」


未来のために、死んでください。


冷たい冷たい最後の言葉は、急速に襲ってくる睡魔の所為で、ほとんど聞き取ることができなかった。

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まるの(プロフ) - コメント失礼します!ここまで一気見してしまいました...!すごくおもしろかったです!更新楽しみに待ってます!! (9月12日 1時) (レス) @page18 id: 0f64c498bd (このIDを非表示/違反報告)
カニチャンチャカ(プロフ) - 続き楽しみです♪(๑ᴖ◡ᴖ๑)♪ (2022年3月6日 14時) (レス) id: cefe10f937 (このIDを非表示/違反報告)
bb - 更新待ってます! (2021年8月18日 23時) (レス) id: c3e9c2aa2f (このIDを非表示/違反報告)
神桜(プロフ) - はじめまして!とても面白い作品で3日でここまで一気に読んでしまいました…更新楽しみにしてます! (2021年7月22日 19時) (レス) id: 86ea1c42a8 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - 待ってました!嬉しいです!! (2021年7月20日 22時) (レス) id: 859195a8cf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:霜夜華 | 作成日時:2019年4月23日 11時

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