Act.19 有栖川 誉 ページ20
麗らかな平日の午後。
ワタシは日課であるティータイムを嗜もうと準備をしていた。
キッチンに立ち、気に入りの茶葉を選び、丁寧に淹れる。
ふと人の気配を感じ、顔を上げると、そこには艶やかな黒髪を揺らす見慣れない人物がいた。
誉「む…?そこのキミ」
『はい?』
誉「見慣れない顔だね。名はなんという?」
『三浦Aです。昨日からお手伝いとして入寮しました』
誉「そうだったのか!ワタシは有栖川誉だ。宜しく頼むよ」
『こちらこそ』
誉「そうだ!キミもワタシと共にティータイムを嗜まないか?」
『いいんですか?ぜひ』
ワタシは寮に新しい顔が現れたことによって、ワタシの中のパッションが弾けると判断し、彼をティータイムに誘った。
何故かはわからないが、Aくんから得られるものはたくさんあるような気がする。
ワタシは久しぶりに素晴らしい詩が湧き上がることを想像し、笑みがこぼれた。
『あ、いい香り』
誉「キミもこの茶葉の芳醇な香りがわかるのかね!」
『いい香りってことくらいは』
はは、と彼は軽く笑みをこぼす。
ワタシはこの不思議な雰囲気を纏ったAくんにさらに興味が湧き、上機嫌で紅茶を淹れる。
すると、Aくんはジッとワタシの手元を見つめていた。
誉「おや、そんなに真剣に何を見つめているのかね?」
『え?…あぁいや、誉さんの手、綺麗だなぁと思って』
誉「むっ…!」
思いもよらなかったAくんの答えに驚きを隠せなかった。
確かにワタシはビューティフルハンドの持ち主だと自覚していたが、まさか初対面の彼にそこまで言われるとは予想もしてなかったのだ。
そして彼は更に、ワタシの予想を超えてくる。
『…ねぇ誉さん。手、触ってみてもいいですか』
誉「むむっ…か、構わないよ」
『ふふ、ありがとうございます』
Aくんは嬉しそうにはにかんだ後、ワタシの手にそっと触れて、撫でてくる。
ゆるやかなその仕草は、まさに猫のしっぽのようだった。
自身の鼓動がうるさい。
ワタシは同性に対するこの感情に、うまく脳が追いついていなかった。
『あ、そろそろいいんじゃないですか、紅茶』
誉「えっ、あぁ、そうだね…」
『美味しそう』
Aくんは紅茶に気を取られた瞬間、パッとワタシの手を離した。
彼は菓子の用意もしたいと言いながら、ワタシの元を離れていく。
少し寂しい気持ちを覚えながら、彼の後を完成した紅茶を持って追いかけた。
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みうら(プロフ) - ゆうさん» ありがとうございます!不定期更新にはなりますが頑張ります。どうぞ宜しくお願いします。 (2018年7月5日 3時) (レス) id: 35ea4b997f (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - 面白いです。続き楽しみにしてます。頑張ってください!応援してます。 (2018年7月5日 1時) (レス) id: a38a23f7c7 (このIDを非表示/違反報告)
み(プロフ) - めぐりさん» ありがとうございます!これからも更新頑張ります。どうぞ宜しくお願いします。 (2018年7月4日 20時) (レス) id: 883feb171c (このIDを非表示/違反報告)
めぐり - 大好きです!応援してます! (2018年7月3日 21時) (レス) id: 993c3cdf12 (このIDを非表示/違反報告)
みうら(プロフ) - なかやさん» 閲覧・コメント・応援ありがとうございます。もっと楽しんで頂けるように頑張ります。これからも応援よろしくお願いします◎ (2018年6月25日 17時) (レス) id: 883feb171c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:上原 | 作成日時:2018年6月22日 20時