関西の太陽 VII (ページ5)

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痕ページ5

* Suezawa

自分で買うか、と言われれば買わないようなブランドバッグを腕にぶら下げて挨拶しながら入ってきたA。

そういうアイテムを持ってない訳では無いけど、大きな買い物と言われる部類は相談を受けることが多いから珍しいな、と声をかけた。

『え？』
末｢鞄。買ったん？｣
『あー…いや、……頂いた』
末｢は？誰に？｣
『…ふっかさん、』

出た。深澤くん。めっちゃ狙いに来てるやん。
正門からも大晴からも名前が上がるほど最近Aと関わりが深い。
2人きりは少ないものの定期的に会ってるらしい。しかも上手いこと誘うねんこれがまた。

行くなとは言われへんから口は挟まんけど、俺が良くは思ってないことは確か。

末｢そんないいもん貰ったん？｣
『プレゼントしたくなったから貰ってって、』
末｢へえ……お礼言うときや｣
『言うたよ！めちゃくちゃ！！』
末｢話聞いても貰うとは思わんかったけど｣
『プレゼント、って渡されたら断れへんよ…』

困り眉で笑うAは近くに来て、深澤くんが好きと聞くブランドサイトを見せてきて、お礼しようと思うけどどっちがいいかな、なんて真剣な表情。

まるで恋人に選ぶような相談をAから受けるとは。
こっちとしては少し腑に落ちないものはあるけど、お礼と称して好きなものをお返ししようとする気遣いは俺がずっと見てきたAやから。

末｢こっちは？気兼ねないし。｣
『そうやんね、こっちは？』
末｢…まあ、Aからなら何でも喜んでくれるんちゃう｣
『そうかなあ……』

うーん、と悩むAと携帯を見てたら小島と晶哉が入ってきて何話してんの、と早々に興味を示し出す。

久しぶりにメンバーで集まる仕事やからってテンション高いなあ。

『ふふ、秘密ー。すえくんと選んでんの！』
福｢なんなん！？気になるやん！｣
『オシャレランキング1位と選ぶねん！』
小｢ここにモデルおるやろ｣
『モデルは話変わるねん、』

屈託なく笑うAは、普段と変わりない。
足の上にぽんとあるハイブランドのバッグが何歩も先を行かれたような気分になるけど。

今は俺に相談して、俺とひみつと共有してくれた事実だけでそれだけでいい。