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強く吹いた風に揺すられて、悪魔は椅子に座ったままうとうと眠ってしまっていたことに気が付きました。
なんだか素敵な夢をみていたような気分で目をこすりながら窓を閉め、ベッドの方を見たとき。人間を助けたのは夢ではないことに気が付きました。
ベッドには、まだ、男がいました。男は横たわったまま、じっと悪魔を見ています。
「ごめん、その、あの…」
あまりに真っ直ぐ見つめてくるので悪魔は何と言ったらいいかわからずに、もごもごと口ごもってしまいました。
「助けてくれてありがとう。きれいなひと」
男は少し掠れた甘い声を出しました。悪魔はその声を何度か頭の中で繰り返します。やっと男の言葉を脳が理解したとき悪魔の目から涙がこぼれ落ちました。
人間にお礼を言われるのは初めてでした。きれいなひと、と言われるのも初めてでした。心がむずむずしてあたたかくなるのも、初めてでした。
「泣かないで」
男は悪魔に向かって手を伸ばしました。長いまつげを濡らす涙を拭ってあげたかったのです。
助けてもらったお礼にはならないかもしれないけれど、なんだか、目の前にいる“きれいなひと”には、それが必要なことのように思えたのです。
「俺は悪魔だよ。怖くないの？」
悪魔は聞きました。
「怖くないよ。」
男は答えました。
「だから、こっちにおいでよ」
悪魔は動けませんでした。近付いたらやっぱり怖がられるかもしれない。それか油断させておいて、その隙を狙って攻撃してくるのかもしれない。
男の、あの怪我は本物でした。とめどなく溢れる血を、苦しそうに呻く姿を、ありありと思い出しながら攻撃してくる理由はないじゃないかと自分に言い聞かせようとしました。
けれど人間は何の理由もなくても悪魔を攻撃してきました。何の理由もなくても悪魔を怖がり、嫌い、罵り、石や物を投げたりしてきました。
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7oh(プロフ) - タルトコさん» タルトコさん、コメントありがとうございます！幸せな気持ちになってもらえてよかった…！こういうのどうなんだろうとか、個人的には好きな世界観だけどこれまでのを読んでくれている人には刺さるのかどうかとかちょっと悩んだりしましたｗこちらこそありがとうですよ！ (2020年7月13日 1時) (
レス) id: 886f4a5b1d (このIDを非表示/違反報告)
タルトコ(プロフ) - こんばんは。恐れられる程の美貌でありながら無垢な心を持つ悪魔の可愛らしさ！悪魔だけれど天使のようなその笑顔に男は心が温かくなり、その温かい眼差しで悪魔は幸せを感じて…と素敵な無限ループを想像しつつ眠れる私もまた幸せです。ありがとうございました。 (2020年7月12日 2時) (レス) id: 276045d76c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：7oh
| 作成日時：2020年7月11日 19時
