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「けれど、お前の命を無条件に長引かせるわけにはいかない。だから人間の姿にしたあと、死に至る傷を付ける」
「死んでしまったら意味がないんです。悪魔の側にいたいんです」
これ以上ないほど真剣に訴えかける雄鹿に、最後まで聞きなさいと言うように樫の木は葉を揺らします。
「だからもし、悪魔が、死にかけたお前を見つけたとして。命を助けたとして。その時は、普通の人間より長く生きられるようにしてやる。ただし、傷痕が消えるまでお前は真実を打ち明けてはいけないよ」
「悪魔が俺を見つけなかったら？」
「お前は死ぬよ」
「見つけても助けてくれなかったら？」
「同じだ」
「助けてくれたら、俺がこのことを打ち明けない限り側にいられるの？」
「そういうことだ。このまま死ぬのとどちらがいいか考えなさい」
どちらにしても死ぬことには変わらないかもしれないと思いながらも、雄鹿には考える時間も悩む時間も必要ありませんでした。
「このまま死ぬのは嫌です。人間でも良い、彼の側で生きたい」
「わかった。お前の願いを叶えてやろう」
ざざ、と樫の木の葉が揺れて木漏れ日が光の粒のように降り注ぎました。
雄鹿は蹄がみるみる形を変えて人間の手になるのを見ていました。立ち方がわからなくなって倒れ込むと、その途端、左足に経験したことのない痛みが走りました。
喉が裂けるほど叫んでも気が紛れないほどの痛み。じくじくと痛む足は熱を持ち、とても起き上がれません。一瞬でも気を抜いたら死んでしまうと思うほど痛くて、熱くて、意識を保つのが精一杯でした。
「私に出来るのはここまでだ。もし悪魔がお前を見つけなかったら、お前の亡骸は私の根に埋めてやるよ」
樫の木の声はどこか少し悲しそうでした。雄鹿は途切れそうな意識を無理やり引き留めて悪魔のことを思います。
人目を恐れてあまり外に出ないということは知っています。けれど晴れた日は、たまに、どこかへ行くのを見かけることがありました。
今日は晴れています。どうか、どうか。外に出ていますように。命を助けてくれなくても、せめて見つけてくれますように。
「あのとき助けてもらったから。俺が悪魔を助ける何かになりたい、」
雄鹿はずっと前から悪魔のことを見ていました。
大人たちは噂に怯えて城に近付いてはいけないと言ったけれど、好奇心旺盛な小鹿の頃からこっそり様子をうかがっていたのです。
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7oh(プロフ) - タルトコさん» タルトコさん、コメントありがとうございます！幸せな気持ちになってもらえてよかった…！こういうのどうなんだろうとか、個人的には好きな世界観だけどこれまでのを読んでくれている人には刺さるのかどうかとかちょっと悩んだりしましたｗこちらこそありがとうですよ！ (2020年7月13日 1時) (
レス) id: 886f4a5b1d (このIDを非表示/違反報告)
タルトコ(プロフ) - こんばんは。恐れられる程の美貌でありながら無垢な心を持つ悪魔の可愛らしさ！悪魔だけれど天使のようなその笑顔に男は心が温かくなり、その温かい眼差しで悪魔は幸せを感じて…と素敵な無限ループを想像しつつ眠れる私もまた幸せです。ありがとうございました。 (2020年7月12日 2時) (レス) id: 276045d76c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：7oh
| 作成日時：2020年7月11日 19時
