「」I miss you…【MS】 (ページ7)

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もどかしい気持ちを抱えたまま過ごしていた、いつかの廊下。彼の隣のクラスで一限の授業がある曜日。
彼のクラスから元気な担任が慌ただしく扉を開けて出てきたかと思ったら素早く踵を返した。

「翔ちゃん！ごめん、日誌！日誌！！」

彼と同じ名前の生徒、或いは彼、に日誌を渡し忘れたようで廊下の端まで聞こえるんじゃないかと思うほどの声が響く。

「声がでけーよ！」

扉のところで日誌を掲げる担任の元へ不機嫌そうに歩いてきた彼と一瞬、目が合った。
淡く胸が弾むより先に、親しげに彼の名を呼ぶ担任に対してどす黒い感情が湧いていた。他意はないにせよ、そう呼べる距離感にあるという事が羨ましかった。

良い先生なのは知っている。良い人である事も。
職場の懇親会という名の飲み会で、大人数でのそういう場、マジョリティに周りを囲まれる状況が得意ではない僕は角の隅に座った。相葉先生はその隣に自ら座って、当時まだ何の接点もなかった僕にあれこれ話を振って楽しそうに笑っていた。
仕事の話、自分の好きな事、手元にある料理のおいしさ。黒目がちの目をきらきらさせて楽しそうに笑いながら、僕に話した。
折角こうして隣なんだから！とか何とか、美味しいですね、楽しいですね、なんて言って賑やかで慌ただしい相葉先生は僕を笑わせようとした。

会話が途切れる瞬間、ふと視線を下げた時その目の煌めきが濁るのを僕は見ない振りをした。

きっと嘘など吐いているわけではなくて素直に真っ直ぐに頭の中にある物事を言葉にしているんだろうなというのは伝わってくる。
ただ少し無理をしているんだと思った。各々勝手に他愛ない話でもして飲めば良いだけなのに、僕を楽しませようとしてくれていたんだと思う。その場で一番つまらなさそうにしていた僕を、笑わせたかったんだと思う。

何の話題だったか普通に面白くて笑った時、それを見た相葉先生が安心したような、嬉しそうな顔をしたのが印象に残っていた。