「」I miss you…【MS】 (ページ13)

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彼が高校から巣立つ日、僕は何でもない顔をして残酷な言葉を連ねた。すきだから、愛おしいから、それ以上彼の未来を汚さない選択をした。

青春の謂わば一頁に僕が入り込んでしまって、ごめんね。どうしても翔くんがすきだった。まだ踏み荒らされていない未来は恐らく、先に進めば進むほど僕との記憶なんて薄れて。また元の真っ白な君に戻れるよ。僕のいない毎日に、慣れるよ。

そんな風には言えなかった。言葉にしてしまったら言霊が乗って、それが本当になってしまう気がした。
ごめんね、とは思っているけど“すきだった”なんて過去形には出来なかったし、僕のいない毎日にも慣れて欲しくなかった。願わくばずっと、呪縛のように忘れられない存在でありたかった。

それこそ言葉にしては赦されない事だと、わかっていた。

当たり障りのない程度に、あとは察して欲しいなんて随分と年の離れた彼には無理難題を無言で突き付ける事しか出来なかった。あのとき僕はどんな顔をしていたんだろう。うまく笑えていたのかな。

縋る手が、もうこれ以上なにかを言ってもどうにもならないと理解して震えながら離れた時、その健気な選択に発狂してしまいそうだった。
何もかも捨ててでも抱きしめて、理不尽や疎外感を埋め尽くすほどの愛を以て守りたいと思った。でも、きっと、そんなのは僕のエゴだから。
同世代からの好意しか知らなかった彼にとって、そんな頃は疾うに過ぎている僕から初めて愛を与えられて。初めての“愛される喜び”に溺れてしまっただけ。相手が僕じゃなかったとしても同じ事だった、筈。

桜が舞い散る中、恐らく泣いているのであろうその背中を眺めて小さく「すきだよ」と言うことしか出来なかった。