〈 02 〉 ページ10
*02*
(降谷side)
2日目にして遅い帰りになってしまった。
部下を通じてあれやこれやと伝達しているが、
腹は空かせているに違いない。
「ただいま」
帰宅早々耳に入ってきたのは、シャワーの水の音だった。
待ちくたびれて先に風呂を入れたのか…
「A、帰ったぞ」
ジャー…
年頃の女の子だから、洗面台を開けられ着替えやらを見られるのに抵抗があるかもしれない。
ドアは開けず、浴槽の方にいるであろう彼女に聞こえるように声をかけた。
ジャー…
返事が無い代わりに、一定のシャワー音だけが部屋中に響く。
ジャー…
「A…?」
嫌な予感がした。
「入るぞ?」
ジャー…
相変わらず返事が無く、途切れないシャワー音。
ガラガラと洗面台の戸を引けば、洗濯機の上にバスタオルと下着類が視界に入る。
「A、僕だが」
半透明の曇った扉の向こうに、彼女の影が確認できる。
ジャー…
「A…」
ジャー…
「……開けるぞ?」
それだけしか聞こえない、一定のシャワー音。
微動だにしない、身体のシルエット。
「……!!」
嫌な予感は、毎度的中するのが僕だ。
「A!しっかりしろ!A!」
身体半分だけシャワーに打たれながら、
Aは浴槽で、倒れていた。
.
.
.
「んっ…」
長い夢を見ていたようだった。
目が冷めると、そこには…
「Aっ」
「れ、令くん!?」
「何驚いた顔してんだよ(笑)」
「だって、令くんが……って、あれ?」
ふと、身体が軽くなっている事に気づいた。
心臓の音が、聞こえない。
「ここは…?」
「……天国。」
「!」
そっか、私死んじゃったんだ。
生きようって決めたばかりなのに、結局…
「がっかりだよ、俺は。」
「えっ?」
「心の強いAが、そう簡単に自分の命投げ出すなんて。」
「令くん…」
仕方ないじゃん…
ずっと我慢してきたんだよ?
「良いじゃない。ここで令くんとずっと一緒にいる方が私は…「生きろよ。」
えっ…?
「Aは、ここに来ちゃダメだ。」
「令…くん?あれ…身体が…」
.
.
.
「!!」
「A!」
あぁ、良かった…
私、生きてる。
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juno108(プロフ) - とっても面白いです!続きがすごく気になります! (2020年5月20日 13時) (レス) id: 73960369a7 (このIDを非表示/違反報告)
さち - おもしろかったです。続きが早く読みたいです。よろしくお願いします。 (2019年2月11日 21時) (レス) id: 70b86fd223 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぴこ | 作成日時:2019年1月13日 2時