第三十七話「あの人」 ページ38
???side
薄暗い路地裏で、鈍く光るナイフが一閃。一瞬遅れて血が溢れ出て、コンクリートの壁に紅い線を引いた
ドッドッドッ
これは己の個性が発するエンジン音ではない。聞き慣れた唸るようなエンジン音も、風を切る音も、今は聞こえない。ひたすら、この身の内側から発せられる心臓の音が破裂しそうなほど強く鳴っているのだ
獣のように目をぎらつかせ、ナイフから滴る血を舐める
これは、死への恐怖だ！
己がヒーローになったときに、捨てた筈のモノだ
思わず震え出しそうになる足を叱咤し、個性を発動させようと踏み出そうとして、体が動かないことに気がついた。まるで金縛りに遭ったかのように指一本動かない
「お前は、偽者だ」
情けない
情けない！！
なにがヒーローだ！！
歯を食い縛り、動け！と何度も立ち上がろうとするが、俺の体は立ち上がるどころか指一本動いてくれない
脳裏に今頃体育祭で頑張っているであろう弟の姿が、走馬灯の如く再生された
死にたくない
ヒーローとして、兄として、何としてでも立ち上がらねば！
ナイフがもう、眼前に迫っていた
「大丈夫かい？」
痛くない、死んでいない
俺に刺さる予定だったナイフは足元にカランと音を立てて落ちている
眼前には、真っ白な白衣とピンク色のポニーテールが揺れていた
「貴様は……ヒーローか？」
「一応免許は持ってるけど、ボクはどっちかって言うとサポート専門かな？
戦闘なんて専門外なんだけど、つい“見てしまった”からね。思わず助けに来ちゃったんだ」
軽い調子で言ってのける彼。サポート専門のヒーローは確かにいるが、彼のようなヒーローを俺は今まで見たことが無かった
「はじめまして“ヒーロー殺し”ステイン
我が名は魔術王ソロモン。『世界を見通す眼』を持つ者だ 」
???side終了
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饅頭 - もう更新しないのですか？ (2020年12月14日 21時) (
レス) id: d3fe79fcb9 (このIDを非表示/違反報告)
遥 - 続きがとても気になります！面白かったです！！ (2019年8月9日 0時) (レス) id: 54047cc432 (このIDを非表示/違反報告)
小豆丸(プロフ) - 月兎さん» ありがとうございます^ ^ちょっと執筆が滞り気味ですが、頑張ります！！ (2018年7月17日 18時) (レス) id: c509ccdcf0 (このIDを非表示/違反報告)
月兎 - とっても面白かったです！頑張ってください！(ロマニさんがどうなっているのかめっちゃ気になる。) (2018年7月17日 18時) (レス) id: 20543c8800 (このIDを非表示/違反報告)
小豆丸(プロフ) - 奏さん» 応援ありがとうございます！ロマニはそのうちまた出てくるのでお楽しみに〜 (2018年7月11日 15時) (レス) id: e73c005897 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小豆丸 | 作成日時：2018年5月3日 17時
