下剋上その7 ページ8
『バレるも何も………死体は喋らないでしょ?』
(……………こいつ、正気か?)
甚爾は目の前の少女の『アイツら殺すって決まってるから』発言に絶句した。
いや、流石に殺すとまでは言ってなかったじゃん。ボコるだけだって言ってたじゃん。
彼の心境は正にこんな感じであった。なんというか、いじめに加担した小学生の言い訳のようである。
いやいやいやいや、と甚爾は思考を巡らせる。
確かに甚爾自身もあのクソ野郎共に対して殺したいと思う節はいくつもあった。口元の傷をつけられたことも含め、割とかなり憎んでいるからだ。
だから殺すというのは構わない。というかアイツらが死んだらせいせいする。
だがこの四つか五つの女の子供が、あくまで陰にとはいえまさか殺すとまで言うとは思わなかった。
「……あー…オマエ、…………」
返す言葉が見つからない。甚爾に「人を殺すな」などという道徳を説く資格は、この家に生まれた時点で持っていなかった。
ああクソ。なんて言えばいい。つーかなんか喋れよ。
甚爾の思考が放棄を考え始めた時、沈黙を破ったのは笑い声だった。
『────……っぶふ、っふふふ……』
「あ?」
『い、いや、まさか本気で受け取るとは思わなくて……ぷっ』
「……………………あ?」
『さ、さすがに私でも殺すとまでは言わないよ。あー、すっごいウケる。今が夜じゃなくて森の中でもなかったら大声で笑い出してたよ』
「……………………………」
このクソガキが。ピシリ、と甚爾のこめかみに青筋が立った。
「……シバくぞ」
『いだだだだ』
力が入らないよう細心の注意を払いつつ、だが怒りは込めて少女の耳を引っ張る。
だが相手はやはり子供。甚爾のようなフィジカルゴリラに耳を引っ張られるだけでも限界がある。
少女がかなりガチな抵抗をしてきたあたりで甚爾は手を離してあげた。
『いった…そんな怒ることか───』
その時だった。少し太い悲鳴に似た何かが、甚爾と少女の元まで聞こえてきた。
少女はおっ、と嬉しそうな声をあげる。甚爾はそれを見て、例の呪霊にアイツらが襲われたのだと察した。
「つか、これ屋敷の方まで聞こえねえか?」
『そこは大丈夫!防音の効果がある結界の呪符をくすねて貼っておいたから!』
「はあ……バレても知らねえぞ」
『大丈夫大丈夫』
それよりもオニイサン、と少女は甚爾を見る。
ああ、また面倒なことを頼まれるのか。甚爾はうんざりとしながらそう思った。
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アリス(プロフ) - めちゃくちゃ良かったです( ˙˘˙ ) (2022年3月10日 23時) (レス) @page14 id: 5459160ee1 (このIDを非表示/違反報告)
AG2(プロフ) - ボーダーラインさん» そう言って貰えて嬉しいです!応援ありがとうございます!頑張ります! (2022年3月10日 17時) (レス) id: b5fe911f2a (このIDを非表示/違反報告)
ボーダーライン(プロフ) - キャプションで食いついて一気に拝読させて頂きました。あー主人公の性格好き!「下剋上して♡」の団扇とペンラを振りながら読んでしまった…。甚爾に最後で爆弾を投下していくスタイル、いいですねぇ。五条との邂逅も気になる〜!ペンラ振って更新待ってます!! (2022年3月10日 16時) (レス) id: 6d6b1b008a (このIDを非表示/違反報告)
AG2(プロフ) - アリスさん» ありがとうございます!がんばります! (2022年3月9日 18時) (レス) id: b5fe911f2a (このIDを非表示/違反報告)
アリス(プロフ) - 更新待ってます!! (2022年3月9日 5時) (レス) @page8 id: 5459160ee1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蝋燭 | 作成日時:2022年3月7日 21時