虎杖姉は一撃女【呪術廻戦】

４撃目 ページ6

そうして私が十六歳になった頃、爺ちゃんが病に倒れ入院した。
　突然の事だった。私がスーパーに買い出しに行ってる最中、家で倒れていたのを弟が発見したのである。その後弟が呼んだ救急車で搬送されて、診断の結果肺癌だと判明した。
　ずっと気付いていなかったため癌はかなり進行しており、手術しなければ治らないと医者には言われた。

　当然爺ちゃんに生きて欲しい私と弟は手術について前向きに考えていたのだが、本人が頑として了承せず、どんなに説得しても爺ちゃんは絶対に折れなかった。うちは裕福じゃない、だのお前らの将来のために貯金、だののらりくらりと躱され、結局入院して様子を見る方針になった。

　「この頑固ジジイ」と悪態をつけば「喧しいわ」と頭を殴られる。正直屁でもない威力だが、昔からの感覚を体が覚えているのか、じんわりと後頭部が痛むような気がした。あくまで気がしただけである。猫パンチと同じくらいの威力ですね。

　祖父が入院し、三人暮らしの住まいは二人暮らしに変わった。とはいっても大抵の家事は爺ちゃんと弟がやっていたため、変わった事と言えばちょっと弟の手伝いをするようになったくらいである。

　これは自慢だが、うちの弟は『安い・美味い・早い』と三拍子揃った料理を作るのが上手い。特に弟の作る鍋の鶏団子が私は好きだ。低コストかつしょうが風味が旨味を引き立てる、弟の十八番である。我が家の鍋の必需品だ。

　話を戻そう。爺ちゃんが入院してから、私と弟の日常に『爺ちゃんの見舞い』が新たに増えた。老い先短いジジイへ孫が会いに行ってあげるという素晴らしい日課である。うん、これめっちゃ言い方悪いな。
　まぁつまり、私と弟もいつ死ぬか分からない爺ちゃんと沢山一緒にいたいということだ。

　きっと、爺ちゃんも弱々しく孫に会いたがってるに違いな────



「───こんなとこ来てねぇで部活しろ部活！！俺の世話なんか来んじゃねぇ！！」

「うるせぇな私だって好きで来てんじゃねーよ！！つーか元気じゃねぇかこの頑固爺！！！」

「ちょっ、二人共！ここ病院だから！！」



　いがみ合う祖父と孫娘。それを宥める孫息子。

　数分後。飛んできた看護師に私と爺ちゃんは怒鳴られた。

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