雨に濡れた日 4

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ずるい、ずるくない。




君と初めて出会ったその日から、

そんな風に溺れていった気がした。









嘘つきだ、女優だ。




心の中で、時には直接、

君をそう罵ったのも覚えている。







だけど大人になり、色々な手段というものを知ってしまえば、


俺の方がよっぽど嘘つきだ、


そう言われても仕方のない行為を君にしようとしている。









「いいです、私がやりますって！」


「ほんと？じゃーお願いしよっかな」





あの日車内で弱みを見せてから、


"後輩のAさん"は前よりも俺をフォローしてくれるようになった。






まだ新人で自分の仕事も大変な中、





「…大丈夫です、後は教えていただきましたから」





懸命に俺の負担を減らそうとしてくれてる。







だから俺も代わりに、




「じゃあ、それ貸して」


「え？」








「代わりに届けてあげる」




win-winのごとく、甘やかしたりしちゃって。






「先輩〜」






あー可愛い。

そんな目で見つめちゃってさ。







「Aさんが頑張ってるからだよ」




得意のスマイルで見つめ返す。





Aさんだなんて、俺の心の中じゃ呼ばれてない君を。






俺の先輩という立場と、


君の"放っておけない"という習性を利用し、


じわじわと、誘き寄せる。






「…先輩？」



「ん？」



「実はこれも分からなくて、」







「……あー。



俺のやり方でやらないからだね」




「……」




他の男という蜘蛛の糸にかかってしまった君を、





「ごめんなさい…」




「いいよ、また教えてあげる」




まるで手繰り寄せる糸のように。

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