雨に濡れた日 4

167 ページ23

「……脚、平気なの？」





震えた声は隠せない癖に、感情を抑える術として、心配するような台詞を選び口にした。


本気で気になっていた内容とは言え、私はどこまでも卑怯な女だ。







「……捻っただけやし、一ヶ月すれば治るやろ」




私とは真逆なくらい、落ち着いた声が返ってきた。









何かが、正しくハマっていないような気がした。








だけど紫耀のその怪我が治る頃には、

何事もなく、二人は元通りになれますか……？







紫耀のその、
冷めたままに感じるオーラでさえも、儚くて愛おしい。



この人が私の恋人だと、出会った頃の私に言ってもきっと信じてもらえない。


だけど月日をかけて、ますます惹かれ合えるようになったのだから。









優しく、また私を包んでもらえるのかな…？









ふらふらと揺れることなく、


紫耀が望む目的地へと辿り着けば、そこに私も、一緒にいられるのかな…？







そんなことを考えていたら、









「………っ、」








はらはらと

涙が出てきた。








心が締め付けられたままだった。








一気に緩んだかのよう、

心の中が加速して、




「っ、」




大きく息を吸って、

酸素を取り込んで、








アクセルを踏んだ。



強く、道なりに。









紫耀の目が、驚いたように少し揺れる。






完全に巻き込んだ。

暴走だ。





これだけあなたの元で、あなたと二人きりでいても、

心の中は独りよがりでしかない。





……それを破綻だなんて、思わないで。終わりだけは訪れないで。









…嫌われても良い。

…醜くても良い。







一緒に居させて。

168→←166

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す