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カンタside
『おわりー』
掃除機を片すAの後ろをついて歩く。玄関と撮影部屋はもういいらしい。なにかにつまづいて、痛い！って言った俺に振り向きもせず、Aは階段をあがっていく。
ねー！彼氏、痛いって言ってるよお！
『あ、カンタくん時間ある？』
リビングにあがると、Aが文庫サイズの本を二冊持って三階を指さした。これは、一緒に本読もうの合図で、時間があれば並んでそれぞれ本を読む。
カ「・・・あるよ！」
いろいろ解決してないけど、それでもその時間は確保したくて答えると、Aはその小さな文庫本で口元を隠して目尻を下げた。
わざとじゃないからかわいくて困る。こういうの。
『・・・・・・』
カ「・・・・・・・」
今日のAはシルエットの大きなゆるいＴシャツとデニム。俺と似てる格好でベッドに寝転んで真剣な表情で本を読んでる。俺は俺で、最近買ったハードカバーの本を読み終えたくて開いた。持ち歩くには重くて進んでいなかったやつ。
『ね、』
カ「んー？」
集中し始めたころ、Aから声がかかる。いまはちょっとー…。
『腕長いの』
カ「俺？」
『いやわたし』
カ「え、そうなの」
『そうそう、』
ごろん、と寝がえりをうって仰向けになったAは小さな本を胸に開いたまま置いて、両腕を伸ばしている。
カ「いいじゃん」
『よくないよー、服がさあ、』
カ「うん」
『萌え袖したいときできなくて泣いた』
カ「・・・・・・・ふうん」
萌え袖したいとき？それなにいつ？どんなとき？何時何分何秒？地球が何回まわったとき？
『佐藤先輩と付き合ってるときですよ、あしからず』
カ「ああ」
『さすがに空白の時間の話はしないです、うん。』
・・・。
タブーでもないけど。まあ。
『…高校生に戻りたいですか？』
カ「いや？全然戻りたくない」
あはは、って乾いた笑いを漏らしたAは、わたしも、と言って俺に背中をむける。俺は常に今が一番楽しいし、できなくなったことよりできるようになったことに目を向けていたいっていうか。過去に固執していると、先に進めない気がして。
まあ、進む先が正解かどうかはまだわからないけど。
『わたしも戻りたくはない、けど、』
それに続く言葉を飲み込んだAは、いつかマックで見た顔をして、辛そうに笑っていた。
つづく
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りい(プロフ) - 個人的に気持ちに余裕がなくて趣味を疎かにしていて、久しぶりに占ツクに来て、まっさきに学パロを拝見しました。社長室さんの小説、やっぱり好きです。素敵な作品を、癒しをありがとうございます！ (2019年9月23日 4時) (
レス) id: 23552ed598 (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - ちひろさん» コメントありがとうございます！素敵な感想、本当に嬉しいです〜ノリノリで描いていったというよりは、すこし苦しみながらできあがっていったので、幸せを感じていただけたことを心から感謝します。ひみつのほうもぼちぼちやっていますのでまた読みにいらしてください〜 (2019年7月27日 22時) (レス) id: 37f3407064 (このIDを非表示/違反報告)
ちひろ(プロフ) - 完結おめでとうございます！今更ながら、ひみつからきて読ませていただきました。もどかしい青春が詰まっていて、社長室さんの描かれるカンタくんととみなが先輩がたまらなく大好きです。とてつもない幸せに包まれました。ありがとうございます。 (2019年7月26日 11時) (レス) id: 04f6d975f4 (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - じょん、さん» コメントありがとうございます！学パロで終わらせておけばよかったのに大風呂敷をひろげて２に続きまして、リアルタイムで呼んでくださった方にはご迷惑をおかけしました…！短編のほうは地道にやりますので、またお暇なときにでも覗いてやってください！ (2019年7月5日 0時) (レス) id: 37f3407064 (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - 名無し9253号さん» お付き合いくださりありがとうございました！ (2019年7月5日 0時) (レス) id: 37f3407064 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：社長室
| 作成日時：2019年6月5日 11時
