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佐藤先輩と富永先輩。
そう呼ぶのをやめた。
理由はとりあえずもう学生じゃないから。悪い意味ではなくて、ここでお二人のお手伝いをする身として、トミーさん、カンタさん、って呼んだほうがしっくりくるかなって思ってお願いした。富永先輩は、はいはい勝手にすればって感じだったけど、佐藤先輩はえぇーって言ってごねごねして結局カンタくん呼びに落ち着いた。まんずが佐藤先輩のことをカンタさん、て呼ぶのがうらやましかったのでちょっぴり残念。
でも本人はカンタさん、って呼ばれるのは納得いかないみたいだったので仕方ない。はっきりとダメと言われたわけじゃ無くて、でも、とかええー、とかずっと言われて。なんでまんずはよくてわたしはダメなんだろ。あ、これ考えないほうがいいやつかも。
カ「A、これ」
『え、はい?』
撮影部屋にあるウォークインクローゼットで服の整理をしていると、玄関で音がしてカンタくんが帰ってきた。帽子を深くかぶったせんぱ、…ゴホン。カンタくんはわたしに太いストローと黒いつぶが揺れるカップを渡してくる。
『たぴおか…!』
薄暗いのとその突拍子のなさで事態を把握できずに、とりあえず渡されたものの名前を小さく呟く。
カ「…」ちゅー
同じ容器の赤いストローを咥えて、せんぱ、カンタくんはそのまま去っていく。くれる、ってこと、だよね。
『ありがとうございますっ』
お礼、と思って慌てて背中に声を掛ける。
撮影部屋を出て階段をあがっていた先輩は、すこしだけ振り向くと、おん、とだけ言ってすぐに見えなくなってしまった。
残されたわたしとタピオカ。わたしもカ、カンタくんにならってストローを咥える。
『…』ちゅうー
おいしい。
っていうかわたしカンタくんって呼ぶの慣れてなさすぎ。
こういったことが最近繰り返されていて、実はとても困っている。はじめはマットレス。目隠しのパーテーション。スタンドライト。そうやってわたしの間借り生活の水準を上げたカンタくんは、そのあともわたしになにか買い与えることを辞めなかった。
バスタオル、フェイスタオル、スリッパ。マグカップ、お箸、Switch、ゴープロ。もういいです、自分で買いますって言っても、うんうん、って言いながらそのままなにかポチる始末。値段の高いものはさすがに受け取れないってはっきりと断って落ち着いたと思ったら、食べ物飲み物など、お土産と言ってちまちましたものを買ってくるようになった。
つづく
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りい(プロフ) - 個人的に気持ちに余裕がなくて趣味を疎かにしていて、久しぶりに占ツクに来て、まっさきに学パロを拝見しました。社長室さんの小説、やっぱり好きです。素敵な作品を、癒しをありがとうございます! (2019年9月23日 4時) (レス) id: 23552ed598 (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - ちひろさん» コメントありがとうございます!素敵な感想、本当に嬉しいです〜ノリノリで描いていったというよりは、すこし苦しみながらできあがっていったので、幸せを感じていただけたことを心から感謝します。ひみつのほうもぼちぼちやっていますのでまた読みにいらしてください〜 (2019年7月27日 22時) (レス) id: 37f3407064 (このIDを非表示/違反報告)
ちひろ(プロフ) - 完結おめでとうございます!今更ながら、ひみつからきて読ませていただきました。もどかしい青春が詰まっていて、社長室さんの描かれるカンタくんととみなが先輩がたまらなく大好きです。とてつもない幸せに包まれました。ありがとうございます。 (2019年7月26日 11時) (レス) id: 04f6d975f4 (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - じょん、さん» コメントありがとうございます!学パロで終わらせておけばよかったのに大風呂敷をひろげて2に続きまして、リアルタイムで呼んでくださった方にはご迷惑をおかけしました…!短編のほうは地道にやりますので、またお暇なときにでも覗いてやってください! (2019年7月5日 0時) (レス) id: 37f3407064 (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - 名無し9253号さん» お付き合いくださりありがとうございました! (2019年7月5日 0時) (レス) id: 37f3407064 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:社長室 | 作成日時:2019年6月5日 11時