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紫家の早朝 ページ3

おにぎり、卵焼き、ソーセージは鉄板。

あとは残りモンを適当にちょちょいと詰めて、ポットに味噌汁を入れたら、弁当は完成。

平日はコレを4セットやけど、土日は2セットになるから楽なもんや。

そうこうしてたら、次男の崇裕が下りてきた。

「おはようさん」

「にーちゃん、休みの日ぃまですんません、ありがと」

「かまへん、かまへん。せやけど…土曜日も仕事とは、小学校のセンセも大変やなぁ」

「まあ、児童らが居ったら出来ひん仕事もあるしな…けど、昼からは出掛けるねん」

「ほうけ」

「…何も聞かへんの?」

崇裕には、最近ええ人が出来たみたいや。

「お前はもう大人やしな」

オレみたいな鈍感な兄貴にも分かるぐらい、最近の崇裕は、ハツラツとしたはる。

真面目で堅物やと思ってたけど、隅に置かれへんなぁ。

「今度、家に連れて来ようと思ってる。にーちゃんに紹介したいねん」

「まぁ、焦らんでもええがな」

「反対なん?俺らのこと」

「そんなことあるかいな。ただまぁ…風雅が高校卒業するまで待ってくれたら、ありがたいだけや」

思春期真っ只中の末っ子の風雅は、兄弟の中で一番の問題児や。

「あいつの反抗期、ハンパないからな」

「まぁ、お前と健がやりやす過ぎただけやろなぁ」

四男の恭平も恭平で問題児やったけど、風雅の比じゃない。

「恭平は、アホなだけやしな」

崇裕の容赦無い言葉に、思わず吹き出す。

「仲良ぉしてるんやったら、オレに気ィ使わんでもええで」

「そしたら、店に連れてくわ。それやったらええやろ?」

「ええで、ご馳走するわ」

「ほな、のんすけにもそう言うとくわ…行ってきます」

崇裕がホッとしたように答えた。

「お早うお帰り」

のんすけ、か。

仲睦まじい姿が想像出来る呼び名に、羨ましいような寂しいような気もしなくもない。

その後ろ姿を見送り、台所に向かうと、弁当包みを手に持ってリュックを背負った風雅が、狭い勝手口から出ようと、苦労している。

「大荷物やなぁ。玄関から出たらええのに」

「ちっちゃ兄が出るの待つの、嫌やねん…行ってきます」

「そうか、お早うお帰り」

末っ子の背中に、色々聞きたい気持ちをグッと飲み込んで、見送る。

言いたいこと、聞きたいことは色々ある。

けど。

そうも行かない時もある。

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蒼乃碧(プロフ) - ありえへんコンビの嫁さん» コメントありがとうございますm(__)m頑張ります! (2021年10月8日 23時) (レス) id: b2e7866667 (このIDを非表示/違反報告)
ありえへんコンビの嫁(プロフ) - 更新頑張ってください! (2021年10月8日 20時) (レス) @page4 id: 39f9ce47b8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蒼乃碧 | 作者ホームページ:   
作成日時:2021年10月6日 1時

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