二十話 ページ27
夢を見てるような状態で扉に手を伸ばす。
あんなに重そうに感じた地獄への入口は意図も容易く開いた。
『失礼します』
図書室は人気がなく静まり返っていた。時間を間違えていたんだろうか、少し不安になったがどうやらそれは大丈夫だったらしい。
ガタッ、と椅子が引かれる音と小さな足音。
「新入生の方、ですか？」
『あ、はい。.....っ！』
本棚の間の隙間から声が聞こえ、同時にその声の主が姿を現した。
薄いような濃いような、薄茶色の髪が光に当たって透け綺麗だ。
二重の瞼の中の瞳は見えにくいのだが灰色の綺麗な瞳孔が本来は存在している。
その人物のことを私はよく知っている。
人並みか、それ以上に。誰よりも。
「俺はエーミールと言います。図書委員委員長として、一年間よろしくお願いしますね」
「........って、だ、大丈夫ですか？！」
『え？』
礼儀正しくお辞儀をしてエーミールさんは顔を上げた、と同時に大袈裟な位に何かに驚いた。
何に驚いたかは、はっきりと明白だ。
『わた、し....何で泣いて...？』
涙が止めどなく溢れて落ちていく。
ストッパーのネジが外れたように歯止めがきかなくて袖で拭くが止む気配はない。
あーあ、止まらない。
嬉しいはずなんだけど、久しぶりに見られた我が主を前にしてとても嬉しいはずなのに。
どうしてだろう。
『何でもないので、大丈夫なので、気にしないでください。なんでもないです。』
「何でもなくても、私が何かをしたから泣いていらっしゃるんですよね？すいません」
ハンカチが目の前に出されるのをどうしようか迷っていると目尻を拭かれた。
不思議と安心する。涙が徐々に萎んでいく。
懐かしい気配が心に染みて何故か落ち着ける。
『あの、もう止まりました。
ありがとうございます。エーミール先輩』
「いえいえ。あの、名前を聞いても？」
『すいません、荻原 Aです。これからよろしくお願いします。』
「A......？」
エーミールさんの顔が歪む。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 581人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
全ステータスカンストした無能とか最強だと思うけど、キャラ変飽きたから好感度で... 好i感i度i−i1i0i0iかiらi始iまiるi学i校i生i活 �� 【wrwrd】高嶺の花は喋らない？【学パロ】もっと見る
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
お星 - うわーすごいいい話じゃないですかぁ（泣）体に気をつけながら頑張ってください''い''（泣いています） (2020年7月19日 21時) (
レス) id: 7b09c37ff3 (このIDを非表示/違反報告)
雨桷(プロフ) - あああ泣かないで下さい（泣）過去編が上手くまとめられなくてどうしようと思ってたのですがそう言ってくれる方がいて嬉しいです( ；∀；)これからも頑張ります！ (2020年4月30日 19時) (レス) id: 74dfe25e8a (このIDを非表示/違反報告)
あんり - う゛う゛う゛(泣)感動しました...過去編とかまーじで涙腺ガバガバでしたわ...更新無理せず頑張ってください！ (2020年4月30日 9時) (レス) id: 4620368618 (このIDを非表示/違反報告)
雨桷(プロフ) - 眠い日とさん» コメントありがとうございます！全部が好きなんて嬉しいお言葉で照れますね！影の藻って、マニアックな場所にお隠れになっているようなので私も今からそちらに走っていきますので少々お待ちを！ (2020年4月28日 9時) (レス) id: 74dfe25e8a (このIDを非表示/違反報告)
眠い日と - コメント失礼しますこの作品すごく面白いですね！語彙力がないんで細かく言えないですが、全部が好きです！これからも無理せず頑張って下さい！自分は影の藻から応援してますので！ (2020年4月27日 22時) (レス) id: 135cca5399 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雨桷 | 作成日時：2020年3月31日 11時
