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ー2007年 夏
「「ありがとうございました!」」
甲子園のサイレンと、照りつける日差しとスタンドから聞こえる声援。
春のセンバツ王者常葉菊川を下した俺らの喜びは最高潮だった。
「ノム!!!やったな!!」
「ナイスリード、誠司。」
ガッチリと手を合わせる。
俺とノム。そしてこのチーム。
あの時の俺は、俺らより強いチームなんか存在せんと思っていた
宿舎に向かうバスの中の騒がしさもいつも以上。
いつもは怒る監督も「ほどほどにせーよ」
と、言っただけで、何も言わんかった。
優勝旗がすぐ目の前に。
そう、思ってた。
宿舎に着き、部屋に向かおうとすると監督に呼び止められた。
「お父さんから電話きとるぞ」
受話器を受け取って耳に当てると、騒がし声が聞こえてきた
「誠司、テレビで見てたで!ほんまようやった!」
「ありがと」
「明日は行くからな!」
今日の準決勝は仕事で来られなかったオトンが、明日は来られるだけで嬉しかった。
「お、ちょっと待って。電話代わるわ」
「誰と?」
「誠司くん!!」
電話から聞こえてきた懐かしい声に思わず顔がほころぶ
「Aやん!元気してた?」
「うん、あんな!私も明日行く!!」
「ほんま!?」
「うん!絶対勝ってな!」
最後に会ったのはこの前の正月。
中学のセーラー服が良く似合うAに、「大人になったな」って言ったら顔を真っ赤にし叩かれた。
明日は、オトンが来る。Aも来る。
絶対勝つ。
俺らなら絶対勝てる。
息を吐いて気合を入れ直した。
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作者名:ジャス | 作成日時:2019年2月7日 8時