参拾肆 ページ34
全員が顔を向けている方向を見る。
誰もいない。
それどころか、脱いだ音が聞こえたはずの靴も
どこにも見当たらない。
ただ履物の音は聞こえていた。
特徴的な足音と共に確かに悠真くんは進んでいく。
さっきの素敵な笑顔を空っぽの空間に向けながら。
『おい、どした』
横を見ると望くんが心配そうにあたしを見ていた。
隠せることなら隠したいが、これはさすがに…
子供たちが次の準備に続々はけていくのを全て見終わってから
望くんの腕を持って事務室の奥へ行く。
『何や、なんかあったんか』
｢見えなかった｣
『ん？』
｢お客さん、見えなかった…｣
望くんの大きな目に精一杯訴える。
吸い込まれそうなほど綺麗な目。
ほんとは生きてないなんて、信じられない。
『…そういうことも起こんのか、成程な』
特に動揺する素振りも見せない彼は、あたしの頭の上に
その大きな手をポンと乗せた。
暖かい。ちゃんと暖かい手。
｢ごめん、次から次へと…｣
『お前が悪いわけちゃうし。前例ないからしゃーない、
とりあえずお客さんに関わるような仕事は無しでいく』
落ち込むなというように2回ポンポンと手が跳ねる。
思考が一瞬停止した後にあっという間に彼は出て行った。
優しい顔をしていた。
昨日みたいな冷たい感情が消えていた。
｢あれはあれで困る…｣
その後、厨房の女の子があたしを呼びに来てくれた。
あたし自身ここの食べ物は望くんのお清めがないと
食べられないのに大丈夫かと思ったが、お客さんに関わることなく
優先度の高い仕事といったら限られるのだろう。
言われた通りに調理し、素手で触らないよう注意を払いながら
怒涛の如く時間は過ぎていった。
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はのん(プロフ) - カジャさん» すごいです！1話でもめっちゃ嬉しくて興奮してしまいました！！ありがとうございます！！！ (2022年10月4日 21時) (
レス) @page50 id: eb6042d99a (このIDを非表示/違反報告)
カジャ(プロフ) - はのんさん» 全く考えていなかったため、このように1話のみとなってしまいましたが…リクエスト、ありがとうございました。 (2022年10月4日 15時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
はのん(プロフ) - そんな風に言っていただいて嬉しいです！望くんと濱ちゃんのその後を書いて欲しいです！ (2022年10月3日 18時) (レス) id: eb6042d99a (このIDを非表示/違反報告)
カジャ(プロフ) - はのんさん» 応援ありがとうございました。はのん様の言葉がとても力になりました。その後、というのは望くんサイドでしょうか？それとも夢主と流星とのお話でしょうか？ (2022年10月3日 14時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
はのん(プロフ) - 全部読ませていただきました！終わってしまって寂しいです。もしよければ、その後どうなったかのおまけ的なの書いてほしいくらいです！ (2022年10月2日 21時) (レス) @page49 id: eb6042d99a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カジャ
| 作成日時：2022年9月11日 21時
