scene.65 ページ16
.
作業部屋に戻ってきて、コートをハンガーにかけると直ぐに髪を縛ってVくんに貰ったCDを手に取った
「……なんだろう、」
よく分からなかったけれどコンポにそれを入れて再生ボタンを押す。
____〜〜♪♪
美しいイントロが流れて
そして聞き覚えのある声が耳に届いた
「!」
『Maybe I, I can't never fly……』
はっと口元を抑えて立ち尽くす
ソクジンくんの声
曲が終わって暫く動けずにいたら、ぽとん、と涙が溢れて床に落ちた
アイドルになったソクジンくんを応援してはいたし、目にすることはあったけれど、こうしてきちんと向き合ったのは初めてで。
もう一度再生する
「___っ、」
空を飛べない、空に触れることもできない、それでも手を伸ばしていたい……
「そんなことない、のに…っ」
貴方は白鳥だよ……
____“ヤー、僕、歌もダンスもできないし…アイドル向いてないかも…っ(笑)”
昔大学時代にそう辛そうに笑う彼の姿を思い出した。そして私はそんな彼にいつも思ってることを口にした。それは今でも思ってること。
『ソクジンくんは、白鳥だよ』
白くて貴く、なにより高貴で美しく、悠々と翼を広げて、あの大空を舞う。大陸を横断して。白い大きな羽を広げて……。
あのシベリアの湖面に立って両手を広げ、天を仰ぐ貴方には翼があった。
「少なくとも私には…」
貴方に翼が見えたの。
曲が終わって涙を拭いながら封筒を開けると、小さな紙切れに《Awake》と記されていて。それが曲名なんだと知った。
「…Awake…」
そしてもう1枚
「!…これって、…」
コンサートのチケット…っ。そんな、こんなのいただく訳にはいかない、と思った時、紙切れに小さな文字が書いてあるのが見えた
_____Aヌナ。こんな形でチケットを渡すなんて狡いよね。でも許して。貴女を大事に思う気持ちから、僕が貴女に送るプレゼントです。
もうCDは聴きましたか?ヒョンの曲です。
今度のライブで、ヒョン、歌います。今度は新しい曲です。ヒョンの歌を、聴きに来てください。僕たち、待ってます。
ヌナを大好きなテヒョンより。
By V_____
予定を確認すれば嘘みたいにその日だけぽっかり空いていて、これは運命ね、と小さく笑ってしまう
「…初めて会いに行くよ、ソクジンくん。…じゃなくて、Jinくん、だね」
アイドルになった彼に、今、会いに行きます
934人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
mila.(プロフ) - xts9cp5sUjUGJbjさん» 感想ありがとうございます。私も実はこの作品が気に入ってるんです笑 この作品を愛読してくださり、ありがとうございました! (2021年10月5日 17時) (レス) id: 1554483eb9 (このIDを非表示/違反報告)
xts9cp5sUjUGJbj(プロフ) - とても…とても綺麗なお話でした。作者様の言葉選びなどがとても魅力的で、物語に吸い込まれるようでした。とても素敵な作品に出会えて幸せです。これからも応援してます、 (2021年10月1日 2時) (レス) @page50 id: a176559be4 (このIDを非表示/違反報告)
mila.(プロフ) - ももさん» ももさん、嬉しいコメントありがとうございます。「素敵な時間」を提供できたとしたら本当によかったです。これからも一緒にバンタンを応援できたら嬉しいです (2021年9月5日 14時) (レス) id: 488172c492 (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - 美しい文章、と素敵な時間をありがとうございます。 (2021年8月30日 12時) (レス) id: 7a7f3f1d7f (このIDを非表示/違反報告)
mila.(プロフ) - まる汰さん» まる汰さんコメントありがとうございます。書いてから随分経ってもなおこうして読んでもらえて嬉しいです。ジンくんの宝石箱、、美しい表現をありがとうございます。なんだか染み入ります(笑) (2021年6月28日 20時) (レス) id: 488172c492 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:mila. | 作成日時:2019年11月29日 12時