真夏の白鳥 【BTS】

scene.35 ページ36

.



V side

「Aヌナ！サインちょーだいっ」



昨日の撮影時、彼女に写真集を差し出したら大きな目をパチクリさせて、僕を見上げた

「ど、どうしたの、買ったの？」
「うん。これ、ヌナが大学の時撮った写真だって聞いて」


ゆっくりAヌナは俯いて、「…Vくん、あんまりそんな目で見つめないで、恥ずかしい」と呟くもんだから、
ちょっと意地悪したくなって、一歩、また一歩と。触れるか触れないかの距離で近づく

最後に鼻が触れそうになるまで近寄ると、ヌナのまつ毛がフルリと震えた

「…V、くん、っ」
「んひ。照れた？ねね、ドキドキした？」
「……わかっててやってるんでしょう、もう、ずるい、」


やんわり持っていた本で僕を押し返す。
この、僕に触れてこない感じが好印象なんだよね
みんなべたべた触ってくるのに、ヌナは自分から絶対触れないの



「ね、ヌナってそうやって静かに笑うけど、本気でお腹抱えて笑ったことあるの」
「…そう言われると、…あんまりないかも、」

あ、でも


「ソクジンくんが虫怖がって変な動きした時は、涙でちゃうほど笑った気がする…(笑)」

「…へーえ。」


ジンヒョンなんだ、やっぱり。


「ジンヒョン、美人？」
「へ…？」
「かっこいいよねぇ、僕も好き。」
「Vくんも美人さんよ」
「えー、じゃあ、Aヌナがもし僕を自由に撮るとしたら、どうやって撮ってくれる？」

少しくらい考えるかと思いきや、









「“汚す”」



って即答。






「汚す、？」

「うん。匂いがしてきそうなくらい、汚いものの中で、Vくんを撮りたい」

「…わお、それは、なんか、えげつないね」

「Vくんは被写体としては全てにおいて最高値だけれど、だからこそ難しいよ…(笑)」


カメラマンの腕が一番試される、と困ったように笑った




「僕は汚す？」
「うん」
「じゃあ、ジンヒョンは？」


すると一瞬黙って、ゆっくり口を開いた









「＿＿＿＿＿＿汚さない、かな…」




「いひ。やっぱり？(笑)」

ジンヒョンは、汚せないの？




そう問いかけると、Aヌナは、眉を下げて静かに微笑んだ









「…うん。」







二人の出会いや、大学時代のことを知らないけど
その言葉だけで
Aヌナにとって、ジンヒョンは、そう言う存在なんだって思い知らされた。

scene.36→←scene.34

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す