* ページ39
『青城で待ってるからな』
その言葉を残して卒業していったその人を見送った中一の春。その時はその背中を絶対に追いかけるもんだとばかり思っていたけど。
結局俺は烏野を選んだ。もちろん後悔はない。
…でも。
『久しぶり』
少しだけ、心が揺れたのも事実。
…Aさんは知っているのだろうか。
“コート上の王様”
耳を塞ぎたくなる、あの異名を。
『…んな顔すんなよ』
自分ではどういう顔をしていたのか分からなかったけど、Aさんがそう言うなら俺はきっと普通じゃない顔をしていたんだろう。
頭を撫でてくれる久しぶりの手の感触に何だかたまらなくなって、思わず目の前の人にしがみついた。
三年前と変わらず背中を撫でてくれるAさんに
“俺はいつまでも弟みたいなもんなんだな”
と、ホッとするような何だかモヤッとするようなよく分からない感情が胸の辺りを支配する。
俺の方が大きくなったのに。それでも俺はやっぱり“抱きしめてもらう”側、なんだろうか。
『お前は私にとってずっと可愛い後輩なんだからいいんだよ』なんて。
『何かあったらいつでも連絡しろよ』なんて。
あなたが烏野に、
…俺の傍にいてくれたらいいのに。
***
「あの人かっこよかったなー!!」
日向の声に現実に引き戻される。
「…おう」
「影山の…って事は北一のマネージャーだったの?」
「…おう」
「ふーん。(王様の先輩だから…女王様?)」
「…お前なんか変なこと考えてんだろ」
「べ、別に!」
明らかに挙動不審になった日向を横目で見ながら、冷め切った肉まんを口に入れる。
「とっとと帰ってちゃんとした飯食えよー」
後ろから飛んできたその声に軽く挨拶して日向と一緒に店を出た。
“早く大人になりたい”
そんな事を思う位には俺はまだ子どもなんだろう。
歯がゆい気持ちを抱えたままなんとなしに見上げた夜空が、何だかいつもより澄んでいるように見えて
(…ムカつく)
心の中で大きな舌打ちを落とし、せめてもの反抗とばかりに俺は頭上に広がる美しい星空を睨み付けた。
570人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雨音(プロフ) - Lunaさん» コメントありがとうございます(^^)わわ、ニヤニヤしてくださいましたか(*^^*)こちらこそ読んでくださってありがとうございます!とっても嬉しいです╰(*´︶`*)╯♡またお暇な時にでも是非覗きに来てくださいませ(*´-`) (6月20日 20時) (レス) id: 9d08cd299b (このIDを非表示/違反報告)
Luna(プロフ) - はじめまして!夢主ちゃん、カッコ良すぎてニヤけました🥹素敵なお話ありがとうございます😊 (6月17日 20時) (レス) @page22 id: ae56522889 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - 赤葦くんのお嫁に行かせてさん» わわ、嬉しすぎるお言葉ありがとうございます(*^◯^*)そしてこちらでも返信遅れてすみません…(TT)目指せかっこいい夢主ちゃん!で書いたのでそう言っていただけてめちゃくちゃ嬉しいです(*´꒳`*)励みになります!!ありがとうございました(TT) (2023年2月11日 18時) (レス) id: 9d08cd299b (このIDを非表示/違反報告)
赤葦くんのお嫁に行かせて - 夢主ちゃんめっちゃかっけぇw女でも惚れるわ(( (2023年1月10日 21時) (レス) @page24 id: 8eae8b626f (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - 麗さん» 二つとも見落としていました…。訂正いたしました、ご指摘ありがとうございました!! (2020年8月24日 23時) (レス) id: 57a2e7dd63 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雨音 | 作成日時:2020年5月23日 23時