＊ ページ39
『…おい』
「何だ」
『何だはこっちの台詞だよ。みぞぐっちゃん何やってんの？』
「何ってお前を保健室に連れてくんだよ」
『いやいやノーサンキューだから。つか何だよこの体勢』
「…」
『おい』
みぞぐっちゃんはそれには答えず、私を横抱きにしたまま体育館の入り口に向かって歩き始めた。
…ってちょっとちょっと。痛い。視線が痛い。
ざわつき始める体育館に、これは面倒な事になりそうだと重いため息を吐き出した。
そしてマジで視線が容赦ない。え、今練習中だよね。何でこんなにビシビシ視線感じるの？お前ら私の事なんて見てないで練習に集中しろよ。
「ちょっと溝口くん！俺のAに触らないでよ！」
うわ、しかも及川何か意味不明な事言ってるし。
飛び込んできた声と言葉に思わずげんなりする。
つか誰がいつお前のものになったんだよ。
…でも。
やっぱり自分が思っていた以上にしんどかったようで、体育館を出た瞬間、気が抜けたのか体が一気に重くなった。
『…ごめん』
口を動かすのも億劫だったけど、みぞぐっちゃんに向かって何とか口を開く。
よっぽどの理由が無い限り練習を休まないみぞぐっちゃんが、大事な練習を抜け出してまで私を保健室に連れていこうとするなんて、思ってもみなかったけど。うん、まぁ、だから。私の体をすごく心配してくれてるっていうのは、さすがに分かったから。
『…ごめん、なさい』
もう一度消えそうな声でそう呟くと、頭上からフッと笑う声が聞こえてきた。
「…お前が素直だと調子狂うな」
…コイツ、後ではっ倒す。
『…もういい。じゃあ嘘』
「俺も嘘」
『はぁ？』
思わず変な声が漏れた。
どういう事。そう聞き返そうとしたのに、言葉が出てこない。ついでに瞼も重くなってきて、私はゆっくりと目を閉じた。
「…お前は、たまには素直になるくらいでいいんだよ」
頭上からぽつりと降ってきたそれに、喉の奥で“何言ってんの”と呟いた。
…何言ってんだよ、みぞぐっちゃん。
らしく、ない、よ。
それらは全て、声にならずに溶けていく。
ゆらゆらと揺れる温もりの中、私は意識を手放した。
A.生理痛
＊＊
溝口コーチに下心はありませんよ！
素直に背中に乗ってくれそうになかったので仕方なく、です笑
ちなみに今回の話は“痛み”についてのお話三つ(の予定)です。ここで一つ目終了！今回は体の痛みでした。
次は夢主ちゃんの独白…の予定。思ってたのと違ったらすみません…
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雨音(プロフ) - コメントありがとうございますT^Tそんな嬉しいことを言って下さるなんて涙が…更新頑張れそうです(*´◒`*)猫様も体調気をつけて下さいね！本当にありがとうございました(*'▽'*) (2022年4月29日 19時) (
レス) id: 9d08cd299b (このIDを非表示/違反報告)
猫 - まじでこの作品大好きです‼︎体調に気をつけてくださいね。 (2022年4月29日 11時) (レス) @page2 id: fd92b45f0d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雨音 | 作成日時：2020年7月25日 1時
