王子様、みつけた。 ページ9
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まだ、意識は遠い闇の中。
声が、聞こえた。
「久しぶり…とか、ないの？」
「……俺に電話したのはいやがらせ？」
「まさか。彼女が開いてた通話履歴の一番上がお前だっただけだよ」
「……そいつに、なんもしてないよな」
「してないよ。倒れてる彼女を運んであげたって言うのに、ずいぶんな言いようだね」
「それは………ありがとう」
「っ、驚いた。お前が素直にそんなこと言うなんて……この子が、大事なんだ？」
「………」
「俺のつぎは、この子を飼い殺すの？」
「ッちがう…！」
大きな叫び声が聞こえて、ゆっくりと目を開くと、見知らぬ天井が広がった。
首を動かすと知らない男の人と二宮さんが向かい合っていて二宮さんの眉間にはさっきわかれたときよりもっと深いしわがぎゅって寄ってる。
「水瀬？」
二宮さんの眉間のしわが取れて、かわりに子犬みたいな茶色い瞳が少し大きくなる。
「あ、目が覚めた？大丈夫ですか？」
横からひょっこり顔を出したのは、息をのむくらいの美形。
大きな目を細めて優しく微笑む姿はそれこそ少女漫画のヒーローみたい。
二宮さんも顔だけは良いけど、この人はまた系統が違う。
美形、もしくは美人って感じ。
「わたし……」
「僕の目の前で倒れられたので、誠に勝手ながら運ばせてもらいました。あ、ここ駅の救護室なんですけど」
どうりで病院みたいな匂いがすると思った。
重たい身体を起こすとさっとその美人さんが手を背中に添えてくれた。
あぁ、正確に言うとちょっと違う。
たぶん美人さんが添えてくれた。
だって二宮さんはそんなことはしない。
背中から離した手を目で追ったら美人さんは柔らかそうな前髪をさっと払う。
前髪の奥に覗く大きな瞳がすごく印象的。
心配そうな目が上目遣いにこちらを向いていてそんなに見つめられたら恥ずかしいなって思う。
「身体越して平気ですか？」
「はい、大丈夫です。ご迷惑おかけしました」
「いえいえ、怪我とかしてないですか」
「はい、大丈夫です」
幾分かすっきりした頭はもうぐらんぐらんなんてしてなかったけど、さっきまでとは違う意味で頭がくらくらする。
私に視線を合わせて微笑む美人さんに胸がざわざわした。
すごく目力の強い人。
二宮さんとは逆。
厚みのある唇も二宮さんとは逆。
ふっくらした赤い唇が弧を描く。
「よかった」
王子様、みつけた。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2019年7月19日 17時
