止り木 ページ34
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いつもいつも、同じことの繰り返し。
それでもまだ私は、同じことを繰り返す。
止り木に止まって傷を癒して、飛んでいった先で傷ついてまた泣きながら戻ってくる。
涙がこぼれたのはきっと、智さんのことが本当に好きだったから。
耐えられなくてダメにしてしまった自分が悔しくて、そして智さんに申し訳なかったから。
冷たい雨に混ざって生温いそれが落ちていく。
ブーとかすかな音がして、暗い空と同じ色をしていたスマホの画面に色が付く。
それに気が付いた智さんが、今度こそ機嫌悪そうに眉をひそめてそのスマホを拾い上げた。
二宮さんに買ってもらったスマホケースがすっかり雨につかっている。
「二宮……誰だ」
「返して……」
「……新しい男でもできたのか」
「違う！返して！」
「そうか……」
智さんの親指がスマホの画面に触れた。
私には聞こえないけど、智さんが耳に当てたスマホの向こうから微かに何かの声がする。
「Aなら俺と大事な話をしてる最中だ、邪魔するな」
「二宮さん！」
「おい、うるさい！」
スマホの向こうから大きな二宮さんの声がした。
たぶん「水瀬！」って私の名前を呼んだんだと思う。
だけど智さんは鬱陶しそうに通話を切ってしまった。
無表情でスマホを投げ捨てて足で蹴り飛ばす。
「誰だ今の、新しい男か」
「ちがう！」
「俺がいるのに浮気したのか」
「だから、ちがうっ……」
「うるさい！！」
「…っ」
飛んできた拳がお腹を突き上げて声もなく崩れ落ちそうになる。
それを許さないように腕をつかまれて今度は伸びてきた足が私の足を払った。
「うっ…」
肩から地面に倒れ込んで、一瞬息が出来なくなる。
その拍子に頭を打ってぐわんと世界が揺れた。
咄嗟に着いた手首が少しだけ痛む。
「俺はお前を愛してるんだって何度言えばわかるんだ」
「……さと、……」
「まだわからないなら、うちに帰って身体に教え込んでやる。そうすればお前も安心だろ？」
どうしていつも、こうなるのだろう。
私はただ、優しい愛がほしいだけなのに。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2019年7月19日 17時
