甘く、沈む。《ars/k.n,s.s》 (ページ20)

今日:2 hit、昨日:2 hit、合計:239,137 hit

フリーページ20

.

「彼は君の王子様じゃないの？」

「二宮さんのことですか？んー、二宮さんは魔法使いなんですよね」

「まほうつかい…？」

「そう。私をドレスに着替えさせてくれて、カボチャの馬車を用意してくれて、王子様のところまで連れて行ってくれる、魔法使いです」

「そうなんだ」

なんだろう、やけに二宮さんのことに食いつくなぁ。

さっき自分で否定してたけど、やっぱり二宮さんが気になるとか？

それはちょっと…困るなぁ。

二宮さん取られちゃうのはいやかも。

って、まさかそんなわけないか。

こんな美形なら恋人の一人や二人くらい……。

「ハッ」

「ええなに、どうしたの？」

「櫻井さん、いま恋人いらっしゃいますか？」

「……いない、けど…」

机に身を乗り出して聞いたら櫻井さんが文字通り引いたように答えた。

背もたれに背を預けて私から距離を取る。

でも、よかった。

重要な情報を聞き忘れるところだった。

こんな美形がフリーとは、万歳。

「えっと……僕に恋人がいたら何か？」

「いえ、こっちの話です」

「？」

また大きな目がきょとんとして私を見てる。

そんな櫻井さんにもう一度「なんでもないです」と微笑んでごまかすように残っていたカフェオレを飲み干した。

.