それはまるでおとぎ話のように (ページ10)

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heaven. 10 ページ10

渋「何しに来たん」

「私はもう一度渋谷さんが

どこかで歌ってたら、って思ったんですけど

大倉さんが、渋谷さんは

もう歌は歌わないって」

渋「...ん」

「どういう...意味なんですか？」

渋「大倉は？」

「俺から言うことじゃないって言われました」

渋「...なんで...聞くん」

「いつも思い出していたのは

小さい頃に聞いた渋谷さんの歌声だったから

会えて嬉しかったんです」

渋「...いつも？」

「はい...ついこの間

勤め先の介護施設のおじいちゃんの

部屋のお花を換えるとき

無意識に鼻唄を歌ってたんですけど

パッと見るとおじいちゃんが泣いてたんです

『孫を思い出す』って言ってました」

渋「...それで？」

「渋谷さんの歌ってこんな感じだったなあって

気づいたら涙が流れるような歌だったなあって

一番最近思い出したのはそのときです」

渋「...ん」

「...私が言いたいことは全部伝えられたし、

どうしても言いたくないことを

無理に聞き出すのは違うと思うので

もう...追及はしないことにします

付きまとってすみませんでした

では...」

渋「行くな」