そらる 薬 ページ13
酸素を吸わないと生きていけないように、そらるがいないと生きていけないような気がしていた
水を飲むことによって喉の渇きを和らげるように、そらると体を重ねてなにかを和らげようとしていた
飼い犬が主人の帰りを待つように、そらるの帰りを待っていた
ある日の夕方、気まぐれでつけたテレビから私の名前が聞こえてきた
行方不明とか警察って言葉も聞こえてくる
私の親を名乗る女性が泣いてる映像も流れた
その姿を見ても、本当に自分の親なのか分からなかった
何も感じない
何も分からない
そらるは一体自分の何なんだろうか
何も分からないけど、そんなことはもう、どうだってよかった
最近、日中はもっぱら眠っていた
ひどい時はそらるが帰ってくる夜まで眠ってしまっていた
そんな日は私を気遣ってか
「昨日無理させたから?今日はゆっくり寝よう」
そう言って何もしなかった
でも我慢できなくなって、夜中にそらるを起こしていた
そんな生活をどれだけ続けたか分からないけど、ある時私は高熱を出した
そらるはとても心配してくれた
「辛くてもお昼は必ず食べてね」
そう言って出かけて行った
でも、私は食べられなかった
夜、そらるがご飯を食べれない私を気遣って、ご飯の代わりに白い粉を飲ませてくれた
解熱剤、と言っていた
深夜、そらるには内緒でトイレで吐いてしまった
胃の中には、何も残ってなかった
朝起きると、いつも以上に頭がすっきりしていた。
熱はまだあるのに不思議な感覚だった。
隣で眠るそらるを見て、今までの事を鮮明に思い出した。
そらると私との関係。
私がなぜここにいるのか。
とりあえず逃げないと…。
そう思ってベッドから出ようとする。
「なんで出るの?おはようのキスは…??」
そう言って腕を掴まれた。
やばい。
「あれ、どうしたの?」
やばい、やばい。
「もしかして、薬効いてない?」
その瞬間掴まれていた腕を、強い力で引っ張られて、私はベッドに押し付けられた。
「あーあ、失敗しちゃったな」
そう言ってそらるはベッドの横の棚から注射器を取り出して、私の腕に刺した。
「でも大丈夫。またやり直せるし」
注射を刺された直後、猛烈な眠気に襲われた。
「おやすみ。今度はもっと大切にするからね」
その言葉を聞いた直後、私は意識を失った。
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