擦り傷 ページ42
トモくんは私の肩にブランケットをかけたあと
ソファに置いてあったありったけのクッションを持っきて
二人の周りにばらまくように置いた。
「こうすれば床の上も寒くないよね」
そして自分もブランケットにくるまって私の隣りに座った。
肩が触れ合うほどの距離だった。
「寝袋ってさ・・・意外とあったかいんだよ」
「そうなんだ・・・寝袋で寝たことないわ」
「今度その時のＤＶＤ貸してあげる」
「ありがとう・・・楽しみにしてる」
「Aさん・・・」
「ん？」
「俺・・・ミウにふられちゃった」
私はなんて答えていいかわからなかった
「もしかして・・・知ってた？」
「ミウちゃんが・・・お土産もってきてくれて・・その時に・・」
「そっか・・・」
ふふっと彼が小さく笑った。
「彼女と会ったの・・・？」
「ん・・・会ったよ・・・」
会ったんだ・・・トモくんが会おうって言えば会うって言ってたよね・・・
「Aさん・・・」
トモくんは急に私の方へ向き直ると
「手取り足取りおしえてくれませんか・・・」
私の両肩に手をおいて・・・そう言った。
「！？」
ちょ・・・ちょっと・・・
ミウちゃんったら・・・言ったの？
「だって・・・トモって・・・ただがむしゃらなだけなんだもん・・・」
ミウちゃんの言葉を思い出した・・・
頬が熱い・・・それは・・きっと暖炉の炎のせいじゃない・・・
「ってAさんに言ってみて・・って
そしたらAさんが答えをくれるよ・・・って・・別れ際にミウにいわれたんだ・・」
ああびっくりした・・・
「Aさん・・・これってどういう意味なの？」
トモくんの目が真っ直ぐに私を見ている
「それは・・・」
トモくんの視線に負けて私はあかく燃える炎に目を移した・・
「Aさん・・・」
呼ばれて顔をあげると・・すぐそばに彼の顔があった
「Aさん・・ここ・・・どうしたの・・？」
トモくんは私の左手首を手に取って言った。
「さっき・・・防波堤のところで転んだ時にすりむいたみたい」
左手首の内側に擦り傷ができていた。
彼は私の傷にそっと唇を当てた。
「あっ・・・」
小さく声が出てしまった。
「ごめん・・・痛かった・・？」
痛かったのではなかった・・・
口づけられた傷口が熱を帯びて・・その熱がジンジンと体全体に広がっていった
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作者名：Luna | 作成日時：2014年2月23日 11時
