【歌い手】俺たち、君の運命の相手です。【浦島坂田船】

#あたしの話 ページ45

.




暖かくて、春を感じる日


そんな日は、決まってベランダに出て、飽きるまで日差しを浴びる。

今日もベランダへ出て、桜が舞う風に吹かれにいく


することがなくて、なんとなくTwitterを開いてみると、タイムラインが兄さんで埋められていた


『久しぶりの実家楽しかった。また会いたい。

…なんて、なに言ってんのよ




まだ帰ってもないくせに』


「バレた〜」



チラッとベランダの隅にしゃがんでいる兄さんは、冷や汗をかきながらあたしの方を見る


『今日帰る予定だったよね？バックれたの？』

「いや、そうじゃなくてね？
なんとなく帰りたくないなぁって」

『いや帰れ』



これでも成人済み。エリートなはずなんだけどなぁ


「だってAにまた会えなくなっちゃうんだもん〜」

なんて。

どうもまだ実家愛…いや、妹愛が抜けないらしい



『じゃあさっさと行ってさっさと荷物まとめて実家帰りすればいいのに』



何気なくサラッと言った言葉はそらる兄さんを元気付けるものになってしまった


「わかったそうする！」

なんてバタバタと家を出て、タクシーを捕まえて空港へと行ってしまった。



『…それでいいのか…？』


大晦日以来、まともに友人と会っていない

だから、この約3ヶ月間は、ほぼそらる兄さんとしか喋っていないことになる


暇だし、そらる兄さんは必ず相手してくれるし
まぁ、帰ってきてくれたら嬉しいとは思う。


けど




『どうにかしないとなぁ』


この想い。




嫌に喉に突っかかる


『(わからないなぁ、この気持ち)』




ずっと逃げてきたけど
その分ずっと喉に違和感を感じていた

いい加減嫌になりそうなこの違和感の名前を

なんとなくわかってた

でも



なんでそうなった？



確証が持てない
ふわふわした気持ちで接しては行けないこの違和感は

どう取り扱えばいいのか


『取扱説明書があればいいのになぁ』


ベランダから漏らしたそんな声は、春の風に乗って


あなたに届いた







.

#赤の話→←#紫の話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す