【歌い手】俺たち、君の運命の相手です。【浦島坂田船】

#あたしの話 ページ39

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もう少しで年を明けるこの時間帯の神社は人で詰め詰めだった。

わかってきたつもりだけど、まさかここまでとは…


押しつぶされそうになる中で、５人の後を危うい足取りで追う
が、流石に逸れそうになった

『っちょ、兄さん』

一番後ろを歩く兄さんに声をかけるにも届かず、
５人とも周りの屋台やなにやらでワイワイしていて聞こえてないみたい

『どうしよ……』

とうとうみんなの背中が見えなくなってしまって、後ろへ後ろへと流されていく

なんども名前を呼ぶけれど、それは虚しくたくさんの人の声に掻き消されてしまった

後ろへと流されていくうちに、人気のないところまで流れてしまった

正直、ここがどこだかわからない。


この人混みを探すにも、見つからないと思う
それ以前に、また押し流されてしまうだろう

『電話、気づくかな』

あれだけガヤガヤしている場所で、電話の音に気付くかは五分五分だけれど、かけてみる

「おかけになった電話番号は、現在…」
『やっぱりでないかぁ…』

通じなかった。

とりあえずそこらへんにでも座って待っていよう、と思い屋台袖の椅子に座ると、横から声をかけられた。

「あれ、お姉さん１人？はぐれちゃったの？」

声をかけてきたのは、一見ガラの悪そうな金髪のお兄さん

「だいたいお連れってお賽銭箱のところらへんにいるっしょ、連れてったげるよ」


行こう、と手を引いてくれたあたり、口調も優しかったし、見た目ほど悪そうな人ではないと思った。
何度か角を曲がり、お兄さんと少し話しも弾んできたところで、路地裏のような人通りの少ない道に出た。

『お兄さん、本当にこっちであってるんですか？』
「あってるあってる。ここが近道なんだよ〜
……な〜んってね」


ニヤリ、とお兄さんの妖しい笑みを見たときには、背中が壁についていた。
ジリジリと近寄るお兄さんの顔は、さっきまでの優しい笑みとは違う
背筋が凍る。
足が動かない。
助けて、と叫ぼうとしても声が出ない
喉が潰れたような感覚
喉がヒュッと音を鳴らした瞬間、
ダンッ！と壁を蹴られた
「だめだよぉお姉さん〜
見ず知らずの柄悪い人にひょいひょいついてきちゃ
……というか、こうなることわかっててついてきた？」

『…っ？！』

声が出ず体が震える
お兄さんは壁に手をつき、徐々に顔を近づけてくる
だめだ、逃げられない
怖い…！！

目を瞑った瞬間、お兄さんの悲痛な叫びが聞こえた。



「だめやでぇ？お兄さん〜」


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