【覆面系ノイズ】放課後、旋律がきこえる【杠花奏】 (ページ47)

今日:3 hit、昨日:3 hit、合計:138,177 hit

# 46 ページ47

.

Aside

『はぁっ、はっ、はぁ…っ』

逃げたい、逃げたい逃げたい逃げたい

こんな醜い気持ちに気付きたくなかった

こんな汚い気持ちに気付きたくなかった

走って疲れて…足を止めたのは眺めのいい丘だった。

手摺に手を置き、叫び出しそうな声が喉でグツグツ煮立つのを必死にこらえる

それでも溢れてきそうな声は、涙とともに溢れるもので

『うわあああぁぁぁっ！！！』

周りの目なんか気にしない

ただただ溢れ出る気持ちをコントロールし切れなくて

この声が枯れるんじゃないかってほど、強く叫んだ

こんな独占欲、いやだ…っ！！

『Aッ！』

泣き叫んでいたあたしは、懐かしい声と共に何かに包まれた。

『はっ、はっ…っにしてんの！？』

あたしを包み、肩で息をしながら怒鳴るこの人。

あれ、前髪が邪魔で顔が見れない

でも、懐かしい香り

『声枯れたらどうすんのッ』

え、この懐かしい声

嫌だ、また沸々となにかが湧き上がる

やだ、やだ、やだよ…！

信じない、信じたくないっ

『“また”歌えなくなったらどうすんの？！』

『ユズくんっ！！』

その声に、あたしは反射的に彼に抱きついていた

『っちょ、なにすっ』

『ユズくん！本物だよね？！本物！！本物のユズくん…っ！！』

さっき、あの事務所で遠く感じたユズくんは

今、あたしの目の前にいる

それがどれだけ、嬉しくて嬉しくて嬉しくて…

『…相変わらず小さいね、A』

『ユズくんよりは小さくないわ』

そう即答するも、普通に会話がしたくても涙が止まらない

『それに、やっと下の名前で呼んでくれた…っ』

ユズくんには、初めて会って初めて呼ばれた名前がアサヒだったから。

『嬉しい…！』

ユズくんが優しく微笑みながら握ってくれるこの手を、あたしは離したくはなかった

.
RH前に続編に移動しますね…！