【宮】セーブデータが破損しています (ページ27)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:8,944 hit

26 ページ27

.

休みの日、彼氏とデート。なんて言えるもんなら言ってみたいね。
傍から見たら私たちはカップルだろう。

けれど近づいて見ればわかる。
空気は重く、相手はにこにこしているもののそれは作り笑い。

「宮くん、私を落としたのって、宮くん？」

休みの日、彼氏とデート。
おしゃれなカフェで話すんだ。

「んー、誰から聞いたん、そないなこと」

「落としたの？」

休みの日、彼氏とデート。
汗をかいたグラスを手に取ってひんやり冷えたアイスコーヒーを飲む。

「飛鳥、記憶を無理に戻そうとしなくてもええんやで
今の飛鳥も俺は好きやし」

「私はあなたの作り笑いがちょっと怖いし、真実を知りたいの」

溶けた氷がカランと音を立ててグラスの中をまわる。
彼はメニューを見ながら、アイスを食べよう、と言う。

「どうして知りたいん」

「記憶を取り戻したいから」

「なんで取り戻したいん」

「前の私に戻りたいから」

「なんで？」

私は彼の鋭い視線が自分を捉えていることを知る。
いい意味じゃないドキドキする感じ。心の奥まで見透かされているようだ。

私がどうして記憶を取り戻したいかなんて自分自身でも分かっていないことまでも。

.