Lv29.恋敵できない -NINO- ページ24
「カズ、ちょっといい？」
夕食後、雅紀は珍しく真面目な表情で部屋に入ってきた。
「…どうしたの」
なんて聞かなくても、ここに来た理由は分かってる。どうせAのことだ。
「Aちゃんの事なんだけど…」
ほらね。
「あぁ、花火大会の時のこと？」
そんなに気にしてるなら俺のとこじゃなくてAのとこに行けばいいのに。
「いや、そうじゃなくて。………いいかな、オレ」
「何が」
「Aちゃんに気持ち伝えても」
「…」
予想外の言葉に一瞬だけ時が止まって、またすぐに動き出す。雅紀は…何？今何て言った？
「あの時の事はちゃんとAちゃんに分かってもらえたんだ。相手の女の子には何の気持ちも無いって」
「やっぱり一方的にされたんだ」
「うん…」
「防御力０かよ」
「いや…まさかあんな突然来るなんて思ってもなくてさ…」
「Aがどれだけ傷付いたと思ってんの」
「だからあの時のことはAちゃんに説明して…」
「泣いてたよ」
「……」
「あー…悪い悪い。えっと、話なんだっけ？」
さっきの続きなんて聞く気分じゃないけど、わざわざ雅紀が部屋に来たんだ。
耳に入れるくらいはしてやるよ。
「彼女に気持ち伝えてもいいかなって」
「なんで俺に聞くのよ」
「カズがAちゃんの恋の応援をしてた事は知ってたよ。潤くんたちから色々聞いてたから」
「…(ったく。おしゃべり野郎め)」
「でも、本当にそれだけ？」
「は？」
「もしも自分の恋より友情の方を取ってるんなら…やめてほしい」
「…」
「好きなら正々堂々と」
「いやいや何言っ…」
"何言ってんだよ、そんなわけ無いだろ"
本当は笑ってそう否定したかったのに。
花火大会のあの日のことを思い出した俺は言葉に詰まってしまった。
だって、辛そうな顔を見せたAにほんの少しの"隙"を見つけて、一瞬でも"奪おう"と思ってしまったのは事実なんだから。
__＿"力づくで奪おうとしただけだよ"
今ならあの時の翔ちゃんの気持ちが分かる気がする。
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作者名：ミト
| 作成日時：2017年8月10日 18時
