Lv26.そんなんじゃない -NINO- ページ13
最悪のタイミングで帰ってきてしまったと、１５分前の自分を責めた。
出発直前の電車に駆け込まないで大人しく次を待っていれば今、あんな光景見なくて済んだのに。
Aの泣き顔だって…見なくて済んだのに。
「…おかえり」
車から降りてきた翔ちゃんは飄々とした態度だった。
その唇が今、Aにキスをしていたと思うとそう簡単にコイツを家に帰すことは出来なくて。
玄関に向かうその背中に問いかけた。
「お前……どういうつもりだよ」
「別に。力づくで奪おうとしただけだよ」
「…」
「結構いけると思ったんだけどなー…」
残念そうな溜め息を吐いた翔ちゃんは、眉を下げて笑った。
「本気になる前に降りるわ」
「…」
「なぁカズ…ちょっとは俺を見習え」
「は？」
「お前にとって相葉くんが大事な友達であるのは分かる。でも…それとこれとは別だろ？」
諭すようなその口調……。
それとこれとは別？一体何の話してんの？
"見習え"って…何を見習えっつーのよ。
「言ってる意味が分かんないんだけど」
「歓迎会でのお前を見て確信したから」
「何を」
「…彼女への気持ち。好きなんだろ？」
「は？俺が？」
「おいおい、マジで？」
翔ちゃんは驚いた顔で俺を見た。
Aが好き？俺が？一体どこをどう見てそう思ったんだよ。
確かにアイツと付き合ったら…なんて妄想は一度だけした事あるけど、別に好きとかそういうんじゃ…
「気付かないフリしてるならやめろ。見ててイライラする」
「…」
「自分の気持ちを押し殺すのも…かっこ悪いからやめとけ」
「いや、だからさ…」
"好きじゃない"
俺はそう言おうとしたのに、何故か声が出なくなって。
本当にAの事を好きじゃないのか、その逆か……ここは一つ、自分と向き合ってみる必要がありそうだ。
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作者名：ミト
| 作成日時：2017年8月10日 18時
