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「あぶっ」
半ば強引に押し込められた唐揚げ。
口の中がいっぱいで喋る事すら出来ずにいると、櫻井くんは少しムっとした顔でまた頬杖をついた。
「今は相葉くんのこと忘れてよ」
「〜っ」
「カズのこともね」
「〜ッぷはぁ…！」
やっと唐揚げが通った喉を、ウーロン茶で潤す。
「な、なんで二宮くん？」
相葉くんのことは分かるけど、なぜ二宮くんの名前が出てくるのか。
彼のことなんて頭に浮かべてないのに。
「とにかく今は俺と居るんだから。俺との時間を楽しんでね？って」
「そりゃもちろん楽しみますけど…あ、ちょっとお手洗いに」
「ん、いってらっしゃい」
少し呆れた笑いを見せた櫻井くん。お手洗いに立つタイミング間違えたかな…。
＊＊＊＊＊
女子トイレは少し混んでいて、ようやく自分の番がきた時だった。
トイレから出て来たその人は私の後ろに並んでいた人の連れだったらしく、
「ねぇちょっと！２５番テーブルの人見て！超かっこいいから！」
「マジ？２５？おっけー！チェックしとく！」
そんな情報を手に入れたその人はルンルンと足を躍らせて店内へ戻って行った。
２５番テーブルにイケメン…これは私も帰りにチャックしなければならない。
…と、用を足した私も、さっきの人ほどではないがルンルンと軽快な足取りで店内に戻った。
「うーん…」
自分の席まで向かいながら、テーブルの側面に記された数字を確認していく。
さてさて…２５番。
一体どれほどのイケメンだというのか…。
(２５…２５…)
「あ、」
「おかえり」
「にじゅう…ご…」
「は？」
テーブルに記された数字をもう一度よく確認…うん、確かに２５だ。
「に、２５番テーブルのイケメン…！」
「ちょっと何…恥ずかしいからやめろよ」
「あ…すみません…」
席についてウーロン茶を喉に流し込み、ふぅ…と一息つく。
櫻井くんの方に目を向けると、彼は不思議そうな顔で私を見ていた。
「いやぁ…やっぱりおモテになられるのだなぁと」
「？」
「さっきね、トイレで女の子が２５番テーブルにイケメンが居るって言ってて…」
「へー」
「さすがです」
「嬉しくないけどね」
「えぇ！櫻井くんは女の子にモテたくないのですか？」
「いや？モテたいよ。 君だけにね」
「…」
それは一体どの恋愛漫画から抜粋したセリフなのか。櫻井くんの口角はニヤリと上がって、私の反応を伺った。
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作者名：ミト
| 作成日時：2017年8月10日 18時
