理性と野性は相容れない【花宮真】

花宮×蓮水―4― ページ38

やってしまった……

朝起きても、昨日の羞恥はやっぱり夢じゃないんだってわかって項垂れる

絶対気持ち悪いって思われた……カレーだって、口に合わなかったかもしれない……




今、この壁の向こうで彼は何を考えているんだろう

そんな途方もない事を考えながら、家のゴミをまとめる

今日は週に2回あるゴミ収集の日。学校に行く時間では間に合わないため、今のうちに持っていかなければならない




玄関を開けると、朝の日差しと涼しい風が吹き込んだ

4月の朝はまだ少し寒い




『重い……』




燃えるゴミの袋がいつもよりずっしりとしている

少しヨロヨロしながらエレベーターに向かい、ボタンを押して4階に来るのを待つ

そして、エレベーターが到着してドアが開き、地面に置いたゴミ袋をもう一度持ち上げようとした時だった




『花宮さん……！』




花宮さんが、私よりスッと先に袋を持ち上げた

一瞬驚いて棒立ちになってしまったが、開閉ボタンを押しながら待っている花宮さんを見て、私も慌ててエレベーターに乗り込む

何て声をかけようか迷っていると、花宮さんから話しかけてくれた




「昨日のカレー、美味かった」


『え……本当ですか……？』


「あぁ」




たったそれだけの言葉だけど、まるで昨日の不安が嘘のように溶けていった




『あ、ゴミ袋……！重いのに、すみません;;』


「別に、大した事じゃない」




エレベーターを降りてからもゴミ袋を持ってくれる花宮さんにお礼を言いつつ、後ろを付いて行く

今日はこれから仕事に行くのか、花宮さんはスーツを着ていた

すらっと背が高くて、髪の毛も綺麗にセットされていて、昨日とは違う雰囲気の花宮さんにまたドキドキする




『あの、ありがとうございました！』


「あー……なんだ、その……」


『？』




私がお礼を言うと、花宮さんは何か言い辛そうに言葉を詰まらせた




「……昨日の夕飯の礼したいから……何がいいか考えとけ」


『お礼……？いいんですか……！？』


「あんまり期待するなよ」




まさか、花宮さんの方からそんな事を言ってくれるとは思わず、私は本人の前ではしゃいでしまった




『嬉しい……！何がいいかな？どうしよう……！』


「その前に、その寝癖つけたまま学校行くなよ。じゃぁな」


『！？』




そういえば、寝起きのまま外に出たんだった……今更気付いて恥ずかしくなる

でも、悪戯っぽく笑う花宮さんは、可愛かった

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