地縛霊―20― ページ20
結局、俺はあいつに何も言わなかった
いや、言えなかった
この欲望を素直に言えたら、どれほど楽なのだろうか
「花宮!危ない!」
やっぱり、あいつと関わったのが間違いだった――
*
目を瞬かせると、そこには見慣れない白い天井と、ベージュ色のカーテン、薬品の匂いが俺を囲っていた
なぜこんな所にいるんだ
「お、目が覚めたみたいだね。気分はどう?」
「……あまり」
「寝不足かな?とにかく、もう授業は終わったし、今日は帰りなさい。幸い、ご家族の方が近くにいるみたいだから、連絡しておいたよ」
養護教諭が坦々と話す
そうだ、6時間目の体育の時、考え事をしている俺の頭にボールが直撃し、意識を失ったんだ
自分の羞恥と怪我のせいで、頭がズキズキと痛む
その時、いきなりカーテンが勢いよく開けられたと共に姿を現したのは、姉貴だった
「心配したけど、案外元気そうだね」
「……別に」
「はい、鞄持って来てあげたよ。今日は送るから、帰るよ」
「仕事は?」
「今日は定時でいいの!ほら、手貸そうか?」
「いい、一人で帰れる」
「そんなわけには行かないでしょ。家まで送り届けます」
歩いて数分もかからない場所だが、立場上仕方ないのでしぶしぶ姉貴の車に乗る
とくに話すこともなく、俺は外を眺めていた
「最近学校どう?楽しい?」
「……普通」
「真は成績良いし、その辺は問題なさそうだね。バスケも頑張ってるみたいだし」
「……別に」
「友達とちゃんと上手くやってる?真のクラスは……いじめ、とか……ないよね?」
「……そんな暇ねーだろ」
「それもそうだね、ならいいんだけど」
「そういう、心配してるふりして探り入れたり、正義面されんの……うぜーんだけど」
「わ、私は、本当に心配で……!」
「だから、そうやって自分の事棚に上げて干渉されんのがうぜーんだよ。……別に、学校生活も、一人暮らしも、問題ねーんだからいいだろ」
「っ……」
姉貴は俺とは正反対の人間だ
俺が悪童なら、姉貴は正義
同じ親から生まれた姉弟なのに、こんなにも異なる人種なんだ。分かり合えるわけがない
姉貴が最後何も言えなくなったのは、自分が高校時代、学校を何週間か欠席した過去があるからだ
俺も親伝で聞いた話だが、具合が悪いわけでもなく、ただ休んでいたらしい
それなのに、そんな事まるでなかったかのように立ち振る舞う姉貴を見て、俺はイラだってしまった
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みかん(プロフ) - 五月雨雫さん» わぁぁコメントありがとうございます(´;ω;`)!!!完結後にも感想をいただき本当に嬉しいです(泣)おかげさまで私も作ってよかったと思えました!!またどこかでお会いできることを楽しみにしています(*‘∀‘) (2020年5月11日 9時) (レス) id: 7906a9a948 (このIDを非表示/違反報告)
五月雨雫(プロフ) - 全話読ませてもらいました!!凄く好みの感動系でなんと言ったら良いか…!作品、物凄く好きです。読者一意見として作ってくださってありがとうございます!! (2020年5月10日 8時) (レス) id: 603d70d68d (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - さくみさん» ご丁寧に返信までいただきありがとうございます(泣)感謝感激です(´;ω;`)これからも誰かに感動してもらえるような作品を作れるように励もうと思います!こちらこそありがとうございました(泣) (2019年11月20日 11時) (レス) id: 7906a9a948 (このIDを非表示/違反報告)
さくみ(プロフ) - こちらこそ本当に素敵な作品をありがとうございました。最後のお話で本当に感動で泣けました泣ありがとうございました!!! (2019年11月19日 23時) (レス) id: 7862236ae4 (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - さくみさん» あああぁぁああぁ(嬉し過ぎて語彙力が著しく低下しました)笑。コメントありがとうございます!!まさか、自分の作品で感動していただける日が来るとは……その事実に私も感動しました(泣)作ってよかったと思えました!!本当にありがとうございます!! (2019年11月19日 22時) (レス) id: 60ab1a28d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みかん | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/alice99101/
作成日時:2019年10月1日 17時