理性と野性は相容れない【花宮真】

地縛霊―17― ページ17

夕方、結局勉強が身に入る事なく勉強会はお開きとなった

俺は心の中で、これなら一人で勉強した方がよっぽどましだったと悪態を付きながら、満足気に帰って行くクラスメイトを見送る


そして、片づけを始めて数分経った時の事だった




ピンポーン




再びインターホンが鳴り響く

今日はもう来客予定はないはず

そういえばAの姿はまだ見えない

あいつが悪戯でもしているのか……。そんな事を考えながら直接玄関に向かうと、そこには思わぬ人物が立っていた




「ごめんね花宮くん。忘れ物しちゃったみたいで……」




先程まで俺の部屋にいたメンバーの一人、高崎 有紗

俺は仕方なく、もう一度家に上げる事にした




「見つかった？」


「あ、うん。椅子の上に置き忘れてたみたい」




沈黙が続く

高崎は他の女子に比べると落ち着きがあって、大人しい印象がある

正直話すようになったのはここ最近の事で、それまでは気にも留めていなかったせいか……会話が続かない

できれば早くお帰り願いたいのだが、なぜか高崎はそわそわするだけでなかなか動かない




「他の2人は？」


「えっと、先に帰ったよ」


「ふーん……高崎は？家どの辺？」


「あ、私は駅から2つ離れた所……」


「送ろうか？」


「あ、ううん！近いし、大丈夫だよ」




一体高崎は何を躊躇っているのだろう

俺はこの状況に、どうしたものかと途方に暮れ、ふと目線を外に向けた時の事だった

いつからいたのか、ベランダにAの姿があった




「花宮くん……ってさ、」




その時、Aに少し気を取られていると、高崎が話を切り出した




「今、好きな子とかいるのかなぁ……と思って」


「別に……いないけど」


「ほ、本当……？」




そう言うと、高崎は恥らいながら俺のシャツを握る




「私、ずっと花宮くんの事、いいなぁ……って思ってて、その……私じゃダメ、かな……？」




その瞬間、俺の中で高崎への拒絶反応が生まれる

普段大人しいふりをして、男がいかにも好きそうな守ってあげたい清楚系女子を演じていたんだ

でもその実、中身はプライドの高いただの男好き

わざわざ友達と俺に近づき、家まで来て、忘れ物をして、2人きりになって……そのあざとい上目遣いも、仕草も、声も、計算尽くされた全ての行動に吐き気がする

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