理性と野性は相容れない【花宮真】

地縛霊―11― ページ11

『真って、意外と長風呂だよね』


「っ！」




その言葉を聞いた瞬間、夕飯を食べていた箸がピタリと止まる

もしかしたら勘付いているのかもしれない

少し冷や汗混じりにAを見ると、特に変わった様子は窺えなかった

単純に、疑問に思った事をポロッと言っただけのようだ

ただ、よりによって今日聞かれた事に少し動揺した




「別にいいだろ」


『そうなんだけど、男の人もお風呂好きな人っているんだな〜と思って。ほら、女の人はよくいるじゃない？』


「……まぁ、うちの姉貴とかはそうだったな」


『でしょ？あーあ、私も温泉とか行ってゆっくり浸かりたいな〜」




そう言いながら手元の本に目線を落とした

家にいる間暇だからと、俺の本を貸している

本のページを捲る長い指先、耳から流れ落ちる艶やかな髪、ふと俺の様子を見ようとする上目遣い。その一挙一挙がまた俺の視線を奪う




『おかわり？』


「……いや、いい」




考えないようにすればするほど、俺の体は正直に反応する

先程処理したばかりなのに、もう元気になってきた

本格的にやばい。地縛霊に欲_情するとか、俺の頭は本当におかしくなったのかもしれない……




「ハァ……」


『え、いきなり溜息ついてどうしたの？美味しくなかった？』


「ちげーよ……今話しかけんな」


『？』




八つ当たりだとわかっていて、つい言葉にしてしまう自分自身に、さらに嫌気が差す

俺がこれ以上おかしくなる前に、早くこいつの未練を晴らして追いださねーと……

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