レンタル婚約者―2―【赤司征十郎】

レンタル―42― ページ1

Aside




唇に、温かいものがふわっと触れる

初めての感覚に、顔に熱が集まるのを感じる


私はたった今、赤司さんに告白され、キスをされた

突然の出来事で上手く思考が回らない


そのままどうしていいか分からず硬直していると、しばらくして赤司さんは離れた




赤「許可もなく……すみません」




何か……何か言わないと……！




『あ、赤司さん、その、勘違い……していません……？』


赤「勘違い……？」


『赤司さんが好きになってしまったのは、それは私じゃないです。サクラなんです。サクラは私だけど……私じゃない……全部偽者なんです……だから……ごめんなさい！』




そう言って頭を深く下げた後、私はその場を走って逃げ出した

ホテルを飛び出してしばらく走り、ふと立ち止まった場所で空を見上げる




『キス……されちゃった……』




誰かに向けて言うわけでもなく、ただ呟いた

まだあの感覚を鮮明に覚えている

赤司さんに手を握られ、熱い視線で見つめられ、触れられて……心臓が高まった

私は彼に好きだと言われて、嬉しかったんだ

それと同時に、悲しくなった


赤司さんが好きになったのは、本当の私じゃない

それがなんだかとても悲しく思えたんだ

桜庭Aが好きだと言われ、期待してしまった




『叶うわけ……ないじゃんか……』




どうしようもなく苦しくて、私は涙を流した

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