10年愛〜＊sho.hirano＊〜

#5 ページ5

なんて、感傷に浸っていても朝は来るわけで




しっかりと抱きついている腕を解いて顔を洗い歯を磨きコーヒーを入れてトーストを焼く





どちらも出来上がる頃に鼻の利く男が目を覚ました




「あれ、、？もう起きたん？」




『うん。もう会社行くけど朝ごはんいる？』




「食べる…。」




とは答えても動く気配が無い…




『コーヒーとパンしかないけど置いとくから食べていいよ。』



「ありがとー」




『鍵はいつものとこね。じゃあもう行くから』




「はーい。あっ、Aちょっと待って」



ベットから半裸の男が玄関へやって来た




『なに？』




スっと伸びた手が唇に触れて




「パン付いてる(笑)行ってらっしゃい。」




『…っ、、あっそ、、行ってきます』




扉を閉めて思わず心臓を抑える




(びっくりした、、朝っぱらからキスされんのかと思った、、)




ラブラブなカップルの朝でもあるまいし…




キスなんて何度もしてる、、、最中にだけだけど…




そう、キスしたり抱きしめたりされた事はないあくまでも抱かれている時の一部分にしか過ぎない




何度も肌を重ねているくせにこんな事で戸惑って免疫が無さすぎる自分が嫌になる





満員電車に揺られながら心臓が平常運転に戻ったきたころ





(まただ…)




ぎゅうぎゅうな電車内で時々感じる違和感



痴漢だ！ってほど完全に触られてるわけじゃないけどなんか当たっているような感覚




後ろも振り向けないような状態で確実でも無い事を主張出来るような勇気あいにく持ち合わせていない




(まぁ減るもんじゃないし)




会社までの5駅を我慢してやっと解放された




オフィス街だけあって大量の通勤客が降りたって改札へ向かっていく



その波に私も逆らわずに流されていると




「A〜！！！」




と、私の名前を馬鹿でかい声で呼ぶヤツがいる




聞き覚えはあるけどずいぶんと会っていないその人物がいるわけないとスルーして進み続けていたら



「ちょっと!!何で無視すんだよ！？」




後ろから腕を掴んで振り向かされた




『え…？岸？何でここにいんの？』




「何でって、、俺も営業所勤務になったから。」



イェイってピースサインをする同期の男に呆気に取られていると



「まぁまぁ、積もる話はまた後でしようぜ。じゃな！」




ってさっさと1人で行ってしまった

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