09 ページ9
「話って？」
eml「作り話でもいいし、事実は小説より奇なりなんてこともいいですし」
私はうーんと悩むふりをして、「じゃあさ、」と口を開く。
「ヘタレな男と、普通の女の子の話でもしてあげようか？」
eml「ヘタレじゃなくて、頭が良くて、イケメンな男と、それにベタ惚れな女の子の話してや」
「言うようになったね、エーミール」
彼の鼻の頭をきゅっと摘まめば、大げさに痛いと言って笑った。
***
kn「まだエーミールとシてへんの？」
「ちょっと。コネシマ声大きいよ」
授業終わり、偶然出会ったコネシマと学食でご飯を食べていた。彼はA定食を二つもたいらげ、私は未だにたっぷりと汁を吸ったラーメンを啜っている。
kn「遅すぎちゃう？エーミール、Aに興味なかったりして」
「いいの。私たちには私たちのスピードがあるんだから」
とは口で言っても、さすがに付き合って半年。遅すぎるのではないかと思った。初めて二人で飲みに行った日の夜、私たちは付き合った。私の家の近くにある公園のベンチに腰掛け、少しだけ話をした。夜空がとても綺麗で、エーミールは星の説明をしてくれた。でも、そんな説明は頭に入らない。彼の言った、「Aさんと同じ理由だと嬉しい」という言葉が気になって気になって仕方がないから。
もしかして彼は私のことが好きなんじゃないか？
そう思えば思うほど、今必死に星について語るエーミールが可愛くて可愛くて仕方なく思えてしまった。
eml「そんで、あのスピカって星は、」
「エーミールって、私のこと好きなの？」
eml「っ、あ、え！？」
ベンチから飛び退き、彼は立ちあがった。
「図星？」
eml「ず、ずぼ…図星というか、なんというか…いや、」
「じゃあ、嫌い？」
eml「ちゃうちゃう！全然！むしろ、っ…むしろ、す、好き…やと思う…」
照れるエーミールは何よりも可愛い。私より背もうんと高くて、男らしいし、格好いいのに。どうしてこんなにくすぐったい気持ちになるんだろう。エーミールを見ていると構いたくて仕方ないし、放っておけなくて、目で追っかけて、幸せな気分になる。
「好きなの？私のこと」
エーミールはこくこくと二度素早く頷いた。
「…ちゃんと言って。好きなら」
これはいじめすぎたかもしれない。彼はどかっとベンチに腰掛けた。それから無言になって、何を考えてるのか分からないけれど、手に仄かな温かさを感じる。ああ、手を握ってもらえたのか。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 139人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Alex(プロフ) - ドナドナさん» ありがとうございます！アラルカァイがよく分かりませんが、喜んでくださって光栄です。お辛い経験されたんですね。心中お察しします。 (2020年4月19日 21時) (
レス) id: 68d9b196e6 (このIDを非表示/違反報告)
ドナドナ - この作品がすごすぎて、目から滝のようなアラルカァイが...夢主のお話が自分にそっくりで、なんとなく嬉しかったです。ありがとうございました。 (2020年4月19日 1時) (レス) id: e73edfc34e (このIDを非表示/違反報告)
きぃ(プロフ) - ｳｫｫｫｫｫｫｫｵｵｵｵｵﾝ!!!!!!(*ﾉД`*)･ﾟ･。 (2019年9月2日 2時) (レス) id: d9682ceb69 (このIDを非表示/違反報告)
Alex(プロフ) - おつるさん» 涙ふきふき。そう思ってくださり、ありがとうございます！今度はうれしい涙が流れてしまうような話を考えます！ (2019年8月8日 19時) (レス) id: 8d1909fe0c (このIDを非表示/違反報告)
Alex(プロフ) - ぐろこさん» ご覧いただきありがとうございます！ちょっと悲しすぎましたね…次はほっこりエーミールを書いてみます！ (2019年8月8日 19時) (レス) id: 8d1909fe0c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Alex
| 作者ホームページ：http://nanos.jp/xxdreamxxalex02/
作成日時：2019年5月25日 14時
