密なる純愛(弟者)※ ページ37
※無理矢理な表現有り
ーーー口を噤んだ恋だったんだーーー
「初めましてAです。宜しくね、弟者君」
そう言って笑顔を向ける彼女に、俺は一目惚れをした。
ある日、兄者が彼女だと言って家に連れてきたのがAだった。馴れ初めは聞いてはいないが大学時代の後輩らしく、偶然にも彼女と俺は同い年だった。俺からしてみれば一部の人間以外興味を示さない冷徹な兄者に彼女だなんて最初は信じられなかった。しかし彼女と居る兄者を見て、彼女の事が本当に好きで、唯一心を許す存在なのだと日々を重ねる毎に知った。また、気難しい兄者の傍で楽しそうに笑う彼女も兄者の事を心から好いているのだと思い知らされた。それでも俺が彼女に寄せる好意が消える事はなく、彼女が兄者に会いに家に来る度に密かに彼女の姿を目で追っていた。2人を見れば叶う筈もない恋だとは分かっていた。彼女が特別な笑顔を向けるのは俺でなく兄者だ。それでも、遠くからでも彼女の姿を見て満たされていた。本当にそれだけで充分だったんだ。
「弟者君」
彼女の声と共に俺の部屋のドアをノックをする音が室内に響く。思わぬ来訪に心臓が跳ね上がり、握っていたコントローラを床に落としてしまった。
「Aちゃん?!な、ど、どうしたの?」
数時間前に遊びに来て兄者の部屋に入って行った筈の彼女が、何故俺の部屋を訪ねに来るのか分からず慌てふためく。急いでゲームを中断し、俺は腰掛けていたベッドから立ち上がって部屋のドアを開けた。淡い桜色のスマホを握り締めた彼女が少し困った様な表情で部屋の前に立っていた。
「急にごめんね。兄者、さっきおついちさんに呼び出されて出掛けて行ったんだけどこの間プレイしたゲーム実況の撮影データが欲しいんだって。弟者君、スマホの電源切れてて連絡付かないからって私のところに来たの」
いつの間に出掛けたんだと思いつつ、俺は慌ててベッドに投げ出されていたスマホを確認した。電源ボタンを押すも画面は起動せず、代わりにバッテリー残量がゼロと言う赤い表示が暗いディスプレイに浮かび上がる。
「ごめん、充電し忘れてたみたい。全然気が付かなかった、今送るよ」
絶対あとで兄者にどやされると、憂鬱な気分になりながらも俺は急いで机の上に置かれたPCの電源ボタンを押して起動させる。
【NEXT】
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アルバ - コメント有難うございます!殆ど自己満足みたいな文章で申し訳ない感じですが、そう言って頂けると嬉しいです!また温かいお言葉有難うございます( ´ ▽ ` )毎日猛暑ですが、ななしのゴンベイさんもお体に気を付けて下さいませ。 (2018年7月18日 23時) (レス) id: 5ec2af47b2 (このIDを非表示/違反報告)
ななしのゴンベイ(プロフ) - 確りとした世界観と、読みごたえある文章に惚れ込みました。日々の癒しとして、これからも愛読させていただきます。日差しが厳しくなって参りましたが、お体には気をつけて執筆活動を楽しんでください。 (2018年7月18日 5時) (レス) id: 5d365d193a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アルバ | 作成日時:2018年6月19日 12時