眠りにつくまで2(おついち) ページ33
布団をかけ直そうとそっと彼の手から重ねた手を離した途端、寝ていた筈の彼にその手を掴まれた。驚いて思わず声を上げそうになるのを堪え、速くなった鼓動と共に小さな声で彼の名を呼んでみた。
「おついち・・・さん?」
てっきり起きた故の行動だと思ったが、うっすら開いた翡翠の瞳は夢現つだ。私の声に彼は寝ぼけ眼で私の方を見ながら何かを呟いた。
「え?」
彼の言葉が聴こえず、もう一度言葉を聴く為に私は彼の口に顔を寄せた。そんな彼は苦しそうな、悲しそうな表情をし、私の手を強く握り締めて言った。
「・・・A、行かないで」
悪夢を見たのか、はたまた深層心理なのかは分からないが、普段の明るい彼からは想像も出来ない様な不安げな表情だった。
人は独りで居られない
寂しさと不安に押し潰されない様に
誰かの温もりを求めるんだ
「ちゃんと居ますよ、ほら、大丈夫」
彼の手を握り返し、私はゆっくりとした口調で微笑んだ。
「うん、良かった」
私の言葉に安心したのか彼は満足気に笑い、私の唇に軽くキスをして、そのまま首に腕を回して自身の方へ抱き寄せ再び眠りについた。密着した身体から彼の温もりと鼓動が私に伝わり、私の眠気に追い打ちを掛ける。
「お休みなさい、おついちさん」
たまにはこんな出来事の夜も良いだろうと、彼の腕に抱かれながら私は瞳を閉じた。私だけしか知らない、秘密の時間。
【END】
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アルバ - コメント有難うございます!殆ど自己満足みたいな文章で申し訳ない感じですが、そう言って頂けると嬉しいです!また温かいお言葉有難うございます( ´ ▽ ` )毎日猛暑ですが、ななしのゴンベイさんもお体に気を付けて下さいませ。 (2018年7月18日 23時) (レス) id: 5ec2af47b2 (このIDを非表示/違反報告)
ななしのゴンベイ(プロフ) - 確りとした世界観と、読みごたえある文章に惚れ込みました。日々の癒しとして、これからも愛読させていただきます。日差しが厳しくなって参りましたが、お体には気をつけて執筆活動を楽しんでください。 (2018年7月18日 5時) (レス) id: 5d365d193a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アルバ | 作成日時:2018年6月19日 12時