第46話 ページ46
「あの人……本当に関心がないのね。実の娘のあなたにさえーーなんて言ったと思う？私がいつキノを縛っているように見えたんだい？元から自由にさせてるよってね。あの子が勝手にここから離れようとしないだけだよって言ったの。なんか……勝手な人って思っちゃった」
キノはローズの肩から手を離した。
『……そうよ。お父様の言う通りよ。私の意思でここにいるだけよ』
「じゃあ、そうさせてるのは……あたしが原因ね」
『違う！ローズと一緒に居たいからよ！！それだけで私は幸せなの！！』
「キノ……」
ローズはギュッとキノを抱き締めた。
「ありがとう。キノ……あたしも幸せよ。でもーーあなたをここに留まらせるわけにはいかないの。寧ろ、あたしに課せられた使命だと思ったわ。あなたはここを出て、もっともっと外の世界を知る必要がある。外の世界は、あたし達の知らない事だらけよ。きっとそうよ。だから、キノは沢山学んで、読み書きできない貧しい子供達に知恵を与えてあげてほしいの。そうすれば、きっと世界は豊かになるわ」
『ロー………ズ……』
耳元でローズの言葉を聞きながら、キノの目に涙が滲んだ。
ーーああ……何を言っても……ローズは曲げないわ……。真っ直ぐな人だからーー。
「それとね、あたしの心配はいらないわ。あたしはここで生きていくって決めたもの」
ローズはキノから離れ、そしてキノの両手を握り締めた。
『ローズ……ここに居たら……確実にあなたは辛い思いをするわ！お父様は今のところは女の子達を外から連れてくることをしなくなったけど、いつかまた何人も連れてくる！それにーー』
「それに、魔力のない赤ん坊は殺される運命……でしょ？」
キノは目を見開いた。
『な……んで……知って……』
「見ちゃったから。それで、ルイに聞いたの。そしたら隠すことなく普通に教えてくれたわ。魔力のない赤児は必要ないって。必要なのは、自分の力を継いだ子だけ……って」
『そ……それをわかった上で……それでも……ローズは愛してしまったの……？』
ローズはキノの手を握り締めたまま、頷いた。
『っーーなんでーーどうして！？』
「どうしてって聞かれたら……答えるのは難しいわ。最低な人って思うわ。でもね、それ以上に、あたしはルイを愛してしまったの」
ローズの目から涙がこぼれ落ちた。
太陽の光りで涙がキラリと光った。
それはそれは美しい涙だった。
「キノ、親友のお願いを聞いて。たったひとつの願いを叶えて」
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作者名：あっちゃん | 作成日時：2023年5月5日 9時
