第5話 ページ5
「いいかい、キノ。私達は魔力を持った人間と同じではないということを、忘れてはいけないよ」
『同じではないの？魔法陣が出せないのですか？？』
「そうだよ。彼等は私達が扱う魔法陣が使えない。だから同じ仲間ではないんだよ」
その言葉に、キノは驚いた。
『では、その方達はどのような魔法を使うのですか？魔法陣が出せないなら、どんな生活をしているのです？？』
好奇心が少女の中に沸き立っていくのがわかる。
「魔力が備わった物を混合させた杖を用いて魔法を使っているんだよ」
『杖？？』
キノは目をパチクリさせた。
『杖で魔法を？では、杖がないと魔法が使えないってことですか？？』
「そうだよ。でも、中には強い魔力を持っている人間もいてね、そういう人間は杖がなくてもある程度魔法が使えると聞くよ」
『それでも、その人達は魔法陣が出せないの？？あんなに便利なのに！？』
「だから、私達とは違うんだよ。キノ、私達は崇高な神に等しい力を持っている唯一の一族なんだ。ただの人間と同じにしてはいけない」
『ならばどうして、初代創造主様は魔法界などを造ったのですか？同じじゃないのに』
「さっきも言ったように、創造主様は憐れに思ったんだよ。魔力の扱いがわからない可哀想な人間に、創造主様は同情なさったんだ。彼等に杖の作り方を教え、様々な魔法を教え、生活を豊かにさせたんだ。見る見る発展していき、魔法界ができたと聞いているよ」
『では何故、魔力を持った人間と魔力を持たない人間は仲が悪いのですか？』
「それは、魔力を持った人間が下に見るようになったからだよ。力の差を見て、上下を作ってしまったんだ。元は皆、魔力が使えないただの人間だったのにね」
『……なんか……可哀想な人達ですね。同じ人間なのに』
キノは悲しそうな声で言った。
「そうだね。今度、私と一緒に外の世界へ行こうか。見て知ることが一番の勉強になるからね」
『え！？本当？お父様！』
キノが目を輝かせると、父親がニッコリ微笑んだ。
『やったー！外の世界なんて初めてっ！！』
父親が人差し指を立てた。
「これだけは約束してほしい。外の世界では決して、魔法陣を出さないとーー」
『どうして？』
「言ったはずだよ。私達は同じじゃないと。魔法陣なんて出せば、混乱を招いてしまうからだよ。約束できないなら、外の世界には連れていけないよ」
『約束しますから！お願い、お父様！私、外の世界が知りたいのっ！！』
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作者名：あっちゃん | 作成日時：2023年5月5日 9時
