第29話 ページ29
「一週間の約束を無視して、お前は結局約束を守れなかっただろう？魔法が使えない人間と交わって子を成すと豪語していたのは誰だい？」
『………っ』
「端から信じなくて正解だったよ。外の世界で
『！？』
言葉が嫌に引っかかった。
『………まさ、か………』
ぼそりと呟くと、ルイがフッと笑った。
『！やめて！！』
「お、お嬢様！？」
突然の大声に、ルルがびっくりした。
『お願いですっ！彼女はーー
「……なら、しっかり守ることだね」
そう言うと、ルイは出て行った。
瞬間、キノはヘナヘナとへたり込んだ。
「お嬢様！？どうされましたか！？」
『そんな……知られてしまうなんて……どうしたら………』
ショックで、手が震えた。
『ロ、ローズが危ないーーお父様に狙われてしまった！急がなきゃーー！！』
「お嬢様！？何処へーー」
勢いよく立ち上がり、急いでマントを羽織り、魔法陣を出して消えてしまった。
考えてる余裕なんてなかった。
一刻も争う事態。
キノはあの池ではなく、直接村へ向かった。
人の目に触れることも厭わない様子で、ローズを探して走った。
村の人間達が唖然とした顔でキノを見ている。
『すみません！ローズは何処ですか！！？』
「ローズなら、羊小屋へ行くのを見たけどーーあんた何処から来たんだい？」
40代くらいの女性が呆気に取られた顔で向こうを指して言った。
『ありがとうございます！』
「ちょ、ちょっとあんたお待ちよ！」
女性の制止を無視して、キノは一目散に向かった。
少し離れた場所に羊小屋があった。
『ローズ！！』
「！えーーキ、キノ！！？」
息を荒らげてやって来たキノに、ローズは仰天した。
「ちょっと！ここへ来たらあんたの正体がバレーー」
『そんなことより、ローズ！私と逃げて！！』
「ーーえっ？」
ローズは目を瞬かせた。
「いきなり何言ってんのよ。逃げるって……何かあったの？」
『あなたのことを知られてしまったの！だから早くーー』
「知られたってーーまさか、あの城主に！？村へ焼き討ちに来るっていうの！？」
『違うわ、そんなじゃなくてーー』
「なら何よ。とにかく落ち着いたら？あんたらしくないわね」
「ローズ、誰だいその子は？」
先程の女性ともうひとりの女性が近づいてきた。
「母さんーーお、叔母さんも……」
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作者名：あっちゃん | 作成日時：2023年5月5日 9時
